ON AIR REPORT オンエアレポート

チェリストの伊藤悠貴さんを迎えて 前編

2017.04.03


今夜もお聴きいただきありがとうございます。
2週にわたって、注目の若手チェリスト、伊藤悠貴さんをお迎えします、今週はその1週目。

<プレイリスト>
M1 ラフマニノフ:チェロ・ソナタ 第4楽章
M2 ラフマニノフ:チェロとピアノのための小品2つより「前奏曲」
演奏)伊藤悠貴(チェロ)、ソフィア・グリャーク(ピアノ)

伊藤悠貴さんといえば・・・
*ブラームス国際コンクール、英国の最高峰ウィンザー祝祭国際弦楽コンクールで日本人初優勝、現在最も注目を集める若手チェリストの一人。*ヴァイオリンを5歳で始めるものの、先生が座っているのに自分が立って弾いているのが気に入らない!という理由でチェロに転向。
15歳からイギリスで生活、現在も東京とロンドンが拠点。
*ラフマニノフがライフワーク。21歳でレコーディングしたデビューアルバムも、異例の「ラフマニノフ:チェロ全作品」。

横山さんいわく、ラフマニノフの「チェロ・ソナタ」は、ピアノがとっても難しい曲。
静岡での共演が楽しみです。

◎アエル珠玉の音楽シリーズ
 〜〜ピアノ 横山幸雄&チェロ 伊藤悠貴 スプリング・リサイタル〜〜
 日時 4月15日(土) 午後2時 開演
 会場 静岡県菊川 文化会館アエル大ホール
バッハ「無伴奏チェロソナタ 第1番」、ショパン「バラード第1番」
ラフマニノフ「チェロ・ソナタ」など

伊藤悠貴さんと



ベートーヴェン没後190年

2017.03.27


今夜もお聴きいただきありがとうございます。

3月26日はベートーヴェンの命日。 今年は、没後190年です。
ベートーヴェンは、若い頃はピアノ演奏家として活躍していましたが、耳の不調もあり、30代前半には自殺まで考えるほどの絶望を味わいます。しかしその苦難を乗り越え、作曲家としての道を進み、ピアノ曲はもちろん、多岐にわたるジャンルで傑作を遺しています。今夜はベートーヴェンの人生の中でも最もドラマティックで、傑作を続々と生み出した30代にフォーカスしました。

<プレイリスト>
M1 ベートーヴェン《ヴァイオリン・ソナタ第9番「クロイツェル」》より 第1楽章/矢部達哉(ヴァイオリン)、横山幸雄(ピアノ)

M2 ベートーヴェン 《交響曲 第3番 「英雄」》より第1楽章/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ヘルベルト・フォン・カラヤン(指揮)

M3 ベートーヴェン《ピアノ協奏曲第5番「皇帝」》より 第3楽章/横山幸雄(ピアノ)、トリトン晴れた海のオーケストラ (コンサートマスター矢部達哉) 2016年9月22日 東京オペラシティ コンサートホール「ベートーヴェン・プラス Vol.4」より

M1は、「ハイリゲンシュタットの遺書」と呼ばれる甥と弟への手紙から1年後、1803年33歳のときの作品。ベートーヴェン自身「極めて協奏風に書かれたヴァイオリン助走つきのピアノソナタ」と記しています。ヴァイオリンとピアノが対等に活躍するあり方は、その後のヴァイオリン・ソナタの方向を変えました。ヴァイオリン・ソナタの傑作のひとつです。

M2、交響曲第2番「英雄」も、同じく1803年、33歳の作品。翌年、ナポレオンが皇帝に即位、民衆のリーダーと期待していたベートーヴェンは失望し「英雄」の献呈を取りやめています。およそ50分の演奏時間の長さも、葬送行進曲やスケルツォを配した構成も常識破りでした。

M3は、1809年、ナポレオンがウィーンを占領し、ウィーンが混乱に陥った時期に書き始めた、ベートーヴェン39歳の作品。こちらの「皇帝」というタイトルはベートーヴェンがつけたものではありません。

●ミューザ川崎ホリデーアフタヌーンコンサート2017前期 
 「黄金のデュオ」矢部達哉&横山幸雄 デュオ・リサイタル
日時:4月1日(土) お昼1時半開演
会場:ミューザ川崎(神奈川)
曲目:ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ 第9番 「クロイツェル」/ベートーヴェン:ピアノ・ソナタ 第23番「熱情」/シューベルト:即興曲D.899より第3番/ショパン:ワルツ第1番「華麗なる大円舞曲」/フランク:ヴァイオリン・ソナタ
共演:矢部達哉

そして、今年のベートーヴェン・プラスVol5は、ピアノソナタ「月光」や、「テンペスト」、そして「幻想曲」をキーワードにした最終パートなど、現在プログラムを考えているところだそうです。

●セルヴィアーノグランドハイブリッドでの番組のための横山さんの演奏が聴けるのは、3月末まで。
ぜひ右のバナーからアクセスしてください。

●次回は、チェリストの伊藤悠貴さんをゲストにお迎えします!


春分の日にちなんで、春にまつわる曲をあつめて

2017.03.20


今夜もお聴きいただきありがとうございます。

日付かわって、20日は春分の日。
春にまつわるクラシックの名曲をお送りしました。

<プレイリスト>
M1 ヨハン・シュトラウス?世 《春の声》/ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、クレメンス・クラウス(指揮)
M2 クロード・ドビュッシー 交響組曲《春》より第1楽章/ クリーヴランド管弦楽団、ピエール・ブーレーズ(指揮)
M3 ジャン・シベリウス 交響詩 《春の歌》op.16/ エーテボリ交響楽団,ネーメ・ヤルヴィ(指揮)

M1は、作者58歳のとき、親友フランツ・リスト(当時71歳)と即興演奏パーティで同席したさい、余興で作曲したとされています。
日本人の感覚でも春のイメージをもっとも適格に表現しているようです。

M2は1886年、ドビュッシーが24歳で着手。この作品を受け取った芸術アカデミーは、「管弦楽にふさわしくない調性、漠然とした印象主義」などと酷評し、受理しなかったと言われます。「印象主義」という言葉が使われた最初の作品です。この曲から音楽は大きく別の方向に梶をきっていく記念碑です。

M3は、ドビュッシーの「春」の8年後、シベリウスの有名な「交響曲2番」の7年前、1994年に作曲。最初は「春の悲しみ」というタイトルがついていたが、改定したさい「春の歌」となりました。春の芽吹きを感じます。

シュトラウス2世が満開の春、ドビュッシーは象徴としての春、シベリウスは、ようやくやって来た春、いろいろな春が感じられる作品たちでした。

3月13日はメンコン初演の日!

2017.03.13


今夜もお聴きいただきありがとうございます。
1845年3月13日は、メンデルスゾーンの「ヴァイオリン協奏曲」初演の日。
数あるヴァイオリン協奏曲の中でも最も有名な作品の一つで、おそらく誰もが一度はあのメロディを耳にしたことがあるのではないでしょうか。「三大ヴァイオリン協奏曲」に今回は注目しました!

M1 メンデルスゾーン《ヴァイオリン協奏曲 ホ短調》op.64 より第1楽章/
五嶋みどり(ヴァイオリン)、マリス・ヤンソンス(指揮)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

M2 ベートーヴェン《ヴァイオリン協奏曲 ニ長調》op.61 より第3楽章/ 
ギドン・クレーメル(ヴァイオリン)、ニコラウス・アーノンクール(指揮)、ヨーロッパ室内管弦楽団

M3 ブラームス 《ヴァイオリン協奏曲 ニ長調》op.77 より第1楽章/
イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)、ダニエル・バレンボイム(指揮)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団


●メンデルスゾーン(1809-1847)は、晩年の1844年、35歳で「ヴァイオリン協奏曲」を作曲。「メン・コン」の愛称でも親しまれています。 メンデルスゾーンはこの他にもう1曲ヴァイオリン協奏曲を遺していますが100年以上忘れられた存在です。横山さんも、幼い頃からハイフェッツの演奏で慣れ親しんだ曲、いつ最初に知ったのかも思い出せないほどだそうです。

●ベートーヴェン(1770-1827)が、1806年、36歳で作曲した「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」は、中期を代表する傑作の一つ。初演は大成功だったと言われますが、その後は演奏される機会が少なく忘れられつつありました。それを現在のように高い評価を得られるまでにしたのは、ヴァイオリンの名手、ヨーゼフ・ヨアヒム(1831-1907)が何度も演奏会でとりあげた功績によると言われています。ベートーヴェンはのちにこの曲をピアノ協奏曲に編曲もしています。ベートーヴェンは、原曲のヴァイオリン協奏曲にはカデンツァを書きませんでしたが、このピアノ・バージョンには入念なカデンツァを書いています。ピアノの名手だったベートーヴェンは自分で弾くことを念頭に置いていたのかもしれません。単純な音形のくり返しが特徴ですが、そこからベートーヴェンの精神性や音楽としての普遍性が感じられます。

●ブラームス(1833-1897)が1878年、45歳で作曲した唯一のヴァイオリン協奏曲。 ブラームスはヨーゼフ・ヨアヒムが弾くベートーヴェンの「ヴァイオリン協奏曲」に感銘を受け、それが「ヴァイオリン協奏曲」を書くきっかけになったと言われています。ブラームスはヨアヒムに相談しながら、作曲を進めました。

三大なんとかは、いろいろありますが、名曲がたくさんある中で、3つの中に選ばれるには、ぱっと聞いてわかるもの、と同時に、何度聞いても深みがあるものが、選ばれているのではないでしょうか?と横山さんはおっしゃっていました。


3月生まれの作曲家ラヴェルを生演奏とともに!

2017.03.06


今夜もお聴きいただきありがとうございます!
今回は、3月生まれの作曲家、モーリス・ラヴェルに注目しました。

まずは、セルヴィアーノ・グランドハイブリッドでの横山幸雄さんの生演奏からスタートしました。

<プレイリスト>
M1 ラヴェル 《亡き王女のためのパヴァーヌ》
横山幸雄(セルヴィアーノ・グランドハイブリッド)

M2 ラヴェル 《ピアノ三重奏曲 》 より第1楽章
ジャック・ルヴィエ(ピアノ)、ジャン=ジャック・カントロフ(ヴァイオリン)、フィリップ・ミュレ(チェロ)

M3 ラヴェル 《ピアノ協奏曲 ト長調》作品30 より第2楽章
マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)、クラウディオ・アバド(指揮)、ロンドン交響楽団

モーリス・ラヴェルは、19世紀末〜20世紀にかけて、ドビュッシーとならび近代フランスを代表する作曲家。
1875年3月7日、スペイン国境近くのバスク地方で生まれました。母親はバスク人。
バスク地方は、スペインとフランスの両側にまたがる海と山に囲まれた自然豊かな地域です。ヨーロッパの様々な影響を受けながらも他とは異なる独特の文化を育んできました。言葉はバスク語で、世界で最も難解な言語の1つと言われています。
ラヴェルの作風には、そんなバスク地方や、アフリカ、イスラム文化にもつながるスペイン風の要素が多くみられます。

M2「ピアノ三重奏曲」は、ラヴェル自身、「バスク風の色彩を持つ」と述べている曲です。バスクの古い民謡の多くは8分の7や8分の5という不規則拍子がベースとなっており、本作でも独特のリズムパターンが用いられています。
39歳のとき、バスク地方に滞在中に作曲されましたが、 ちょうど世界大戦の勃発と重なり、ラヴェルは作品の完成を急いだといわれます。ストラヴィンスキーにあてた手紙には「すぐに出発しなければという思いに駆られて、5か月かかる仕事を5週間でやり遂げました!」とあるそうです。そして、完成した翌年1915年には志願兵となり従軍しました。

M3「ピアノ協奏曲」第2楽章は、横山さんが「20世紀に書かれた作品の中でもっとも美しいもののひとつ」と語るお気に入り。
この曲にも、バスク地方の民謡など、少し民族風の香り+スペイン音楽、ジャズのイディオムなど、多彩な要素が用いられています。
これらの要素をラヴェルが自らの個性でみごとにまとめあげている、そこが魅力、とのことです。

横山さんがフランスに留学したのはラヴェルの没後50年のときでした。今年は、没後80年。
たくさんの思い出がよみがえって来る作曲家、ラヴェルだそうです。

来週は、ヴァイオリン協奏曲に注目します!お楽しみに。

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