ON AIR REPORT オンエアレポート

5月7日生まれのブラームスとチャイコフスキー

2017.05.08


今夜もお聴きいただきありがとうございます!
そして、5月5日入魂のショパン2017へご来場いただいたみなさまありがとうございました!

今夜は、5月7日生まれの有名な作曲家2人が、同時期に作曲したピアノトリオに注目しました。その二人とは、1833年生まれのブラームスと、1840年生まれのチャイコフスキー。7歳違いで、二人とも、ピアノ曲、オーケストラ作品、室内楽も作曲しています。

<プレイリスト>
M1 ブラームス 《ピアノトリオ 第2番 Op.87》より第1楽章
演奏:ウラディミール・アシュケナージ(ピアノ)、イツァーク・パールマン(ヴァイオリン)、リン・ハレル(チェロ)

M2 チャイコフスキー 《ピアノトリオ イ短調 Op.50「偉大な芸術家の思い出に」》 より第2楽章
演奏:ボザール・トリオ

M1は、ブラームスが1880−1882年、50歳を前に書いた2つ目のピアノ・トリオ。ブラームスの3曲のピアノ・トリオは、1番が朝っぽくさわやかで、この2番は地味ながら味わいぶかくクララ・シューマンが最も愛したと言われます、3番は、深刻な雰囲気がします。20歳で出会ったシューマンによって才能を評価されたものの、40代以降に作曲の才能が開花したブラームスにとってこの2番のピアノ・トリオは円熟期の1作です。

M2も、1881年から1882年にかけて作曲されました。チャイコフスキー40代前半の作品です。この曲は、旧友ニコライ・ルビンシュタインへの追悼音楽として作られ、作品に付された献辞にちなんで『偉大な芸術家の思い出に』という副題ないしは通称で知られています。ニコライ・ルビンシュタインは初代モスクワ音楽院院長でピアニストで、チャイコフスキーに協奏曲第1番の初演を依頼されるも断ったエピソードは有名です。50分近い演奏時間の大作で、とりわけ第2楽章は、主題と変奏曲で形成された巨大な構成です。

横山さんにとってチャイコフスキーは、幼いころからいろいろなレコードで聞いて親しんだ作曲家です。このピアノ・トリオもひんぱんに演奏しますが、1番多いのは「ピアノ協奏曲」、反対にピアノ・ソロ作品はあまり弾く機会がありません。

ピアノ・トリオは、ベートーヴェン以降、デュオと4人以上の合奏の間で、最も演奏者それぞれが自己主張する形態として充実していきました。ベートーヴェンは7番まで、ショパンも1曲、シューベルト4曲、シューマン3曲、フランク4曲、ブラームス3曲、ドヴォルザーク4曲、ラヴェルもピアノ・トリオを書いています。

入魂のショパン2017直前スペシャル 第3弾!

2017.05.01


今週も、ピアノでめぐり逢いをお聴きいただきありがとうございます。
5月5日の入魂のショパン2017、いよいよ近づいてきましたね!

直前スペシャルも最終回。
今週は、フィナーレの第5部で演奏される曲からお送りしました。

<プレイリスト>
M1 ショパン 《マズルカ風ロンド Op.5》演奏:横山幸雄(ピアノ)入魂のショパン2015より
M2 ショパン 《バラード 第1番 Op.22》演奏:横山幸雄(ピアノ)入魂のショパン2016より
M3 ショパン 《ポロネーズ第7番「幻想」 Op.61》演奏:横山幸雄(ピアノ)入魂のショパン2014より

2010年のショパン生誕200年からスタートしたこのリサイタルも8回目を迎えます。今回の入魂のショパン2017では、20代半ばから後半のショパンに焦点をあてます。第1部は滅多にまとめて演奏されることがない20代前半の代表作「24のエチュード」全曲を、第2部〜第4部で、20代半ばから後半にかけての作品を作品番号順に演奏します(op.26-op.44)。ラストの第5部では、今いちどショパンの全生涯をその代表作によって見渡します。トークもまじえて進行しますので、GWの1日をショパンに浸ってたっぷりとお楽しみください。

M1の「マズルカ風ロンド」は、16歳の作曲です。「天才ショパンのきらめきが随所に感じられる最初の作品」と横山さん。「ロンド」は当時ウェーバーなどが作曲し流行していたスタイルで、ショパンがポロネーズやマズルカではなく、国際的に通用するスタイルで曲を書こうとしたことがうかがえます。

M2は、ウィーンでワルシャワ蜂起の知らせを受けたころに着手した作品。1831年から35年ごろと、ショパンは最も長い時間推敲を重ねています。ピアノ音楽史上、最初に「バラード」とタイトルが付けられた作品です。

ショパンの創作の絶頂は32歳ごろと横山さんは考えています。「バラード第4番」「英雄ポロネーズ」などを次々に作曲しました。
今年は、20代後半のショパンの作品を第2部から4部で聴くことで、円熟期に入る直前の魅力、色合い、特徴を感じていただけると思います。
ジョルジュ・サンドと出会い、創作環境も整い、傑作ぞろいの作品群です。

そして、M3でお送りした「幻想ポロネーズ」は、35−36歳の頃作曲されました。身体的にも精神的にも弱っていたショパンによる生涯最後の10分規模のピアノ・ソロ作品です。

それでは、5月5日(金・こどもの日)、東京オペラシティコンサートホールにぜひお越しください。
当日券もあります!

◎入魂のショパン2017
日時:5月5日(金・こどもの日)、お昼1時開演 夜9時ごろ終演予定
会場:東京オペラシティ コンサートホール
曲目:<第1部> エチュード集 Op.10 、エチュード集 Op.25
<第2部> 2つのポロネーズ Op.26 、 2つの夜想曲 Op.27 、24の前奏曲 Op.28
<第3部> 即興曲 第1番 Op.29 、4つのマズルカ Op.30 、スケルツォ 第2番 Op.31
2つの夜想曲 Op.32 、4つのマズルカ Op.33 、3つの華麗なるワルツ Op.34
ピアノ・ソナタ 第2番 「葬送」 Op.35
<第4部> 即興曲 第2番 Op.36 、 2つの夜想曲 Op.37 、バラード 第2番 Op.38
スケルツォ 第3番 Op.39 、2つのポロネーズ Op.40 、4つのマズルカ Op.41
ワルツ 第5番 「大円舞曲」 Op.42 、タランテラ Op.43 、ポロネーズ 第5番 Op.44
<第5部> マズルカ風ロンド Op.5 、 アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22、バラード 第1番 Op.23 、ポロネーズ 第6番 「英雄」 Op.53 、子守歌 Op.57
舟歌 Op.60 、 ポロネーズ 第7番 「幻想」Op.61

各部の間の休憩時間には、会場の外にも出られます。オペラシテイ内でご飲食、コンビニでのお買い物もできます。


入魂のショパン2017 直前スぺシャル2

2017.04.24


今夜もお聴きいただきありがとうございます!

入魂のショパンまであと2週間!!!ワクワクしますね!
3回にわけての直前スペシャルで予習すると、本番もいっそう楽しんでいただけると思います!

今夜・2回目は、第3部、第4部で演奏される曲について解説、ご紹介しました。
すべてこの番組だけで聴ける過去の入魂のショパン音源です!

<プレイリスト>
M1 ショパン《即興曲 第1番 Op.29》演奏:横山幸雄(ピアノ)入魂のショパン2014より
M2 ショパン《スケルツォ 第2番 Op.31》演奏:横山幸雄(ピアノ)入魂のショパン2015より
M3 ショパン 《ポロネーズ 第5番 Op.44》演奏:横山幸雄(ピアノ)入魂のショパン2014より

M1は、ショパン27歳のとき作曲。当時の「即興曲」は今でいう即興演奏とはあまり関係がなく、気軽なジャンル、即興風の雰囲気を醸し出している曲、という意味。即興演奏に近いのが「幻想曲」と名付けられた曲です。

●今回の演奏会では、第2部から第4部で、20代後半のショパンの作品を作品番号順に演奏します。Op.26〜44です。作品群としては「ポロネーズ」「ノクターン」「プレリュード」「即興曲」「マズルカ」「ワルツ」「ソナタ」「バラード」「スケルツォ」・・・と実に多彩で、作曲家として充実した20代を送っていたことが分かります。
●シューマンのように作曲家によっては、ある時期に同じジャンルの作品をまとめて作るタイプもいますが、ショパンは、ほぼピアノ曲に絞って作曲しているものの、バランスよく様々なジャンル・形式を取り入れていると言えると思います。

M2の「スケルツォ」とは、ベートーヴェンが交響曲の中の明るい楽章を「スケルツォ」と呼んでいましたが、ショパンはそれを発展させてピアノ曲として独立させています。

M3の「ポロネーズ第5番」は、30歳ごろの作品で、今回の演奏会では、4部の最後に演奏されます。この頃、ジョルジュ・サンドのもつノアンの館で過ごすことの多かったショパン。パリの喧騒を離れ、創作活動に集中できる環境だったと考えられます。本作はそこで完成させた作品の一つ。

力強いコントラストをもつ作品がそろっています。ぜひ、会場でお楽しみください!

◎入魂のショパン2017
日時:5月5日(金・こどもの日)、お昼1時開演 夜9時ごろ終演予定
会場:東京オペラシティ コンサートホール
曲目:<第1部> エチュード集 Op.10 、エチュード集 Op.25
<第2部> 2つのポロネーズ Op.26 、 2つの夜想曲 Op.27 、24の前奏曲 Op.28
<第3部> 即興曲 第1番 Op.29 、4つのマズルカ Op.30 、スケルツォ 第2番 Op.31
2つの夜想曲 Op.32 、4つのマズルカ Op.33 、3つの華麗なるワルツ Op.34
ピアノ・ソナタ 第2番 「葬送」 Op.35
<第4部> 即興曲 第2番 Op.36 、 2つの夜想曲 Op.37 、バラード 第2番 Op.38
スケルツォ 第3番 Op.39 、2つのポロネーズ Op.40 、4つのマズルカ Op.41
ワルツ 第5番 「大円舞曲」 Op.42 、タランテラ Op.43 、ポロネーズ 第5番 Op.44
<第5部> マズルカ風ロンド Op.5 、 アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22、バラード 第1番 Op.23 、ポロネーズ 第6番 「英雄」 Op.53 、子守歌 Op.57
舟歌 Op.60 、 ポロネーズ 第7番 「幻想」Op.61



入魂のショパン2017〜直前スペシャル1

2017.04.17


今夜もお聴きいただきありがとうございます。

今年も近づいてきた「横山幸雄 入魂のショパン2017」
3回にわたって、直前スペシャルをお送りします。

ショパン生誕200年を機に始めた演奏会、今年で第8回目を迎えます。これまで、いろいろな形でショパンの人生・作品にスポットをあててきましたが、今回は20代半ばから後半にかけてのショパンに焦点をあてます。

<プレイリスト>
M1 ショパン《12のエチュード op.25》より<エオリアンハープ>(「入魂のショパン2016」ライブ音源)
M2  ショパン 《2つのポロネーズOp.26》より 1曲目(ポロネーズ第1番)(「入魂のショパン2014」ライブ音源)
M3  ショパン 《24のプレリュードOp.28》より <雨だれ>(横山幸雄最新アルバム『入魂のショパン』より)

M1の12のエチュード作品25、この曲集を出版した27歳の頃、ショパンはマリアとの婚約破棄を経験し、失恋の傷を癒すために友人のプレイエルとロンドンへ旅行に出かけています。作品10はリストに、作品25は、その愛人のマリー・ダグ伯爵夫人に献呈されています。今回の演奏会では、2つの『12のエチュード』作品10と25を全曲演奏します。現代の演奏家にとっても演奏がとても難しい作品群で、すべて演奏される機会は実は少ないもの。お聴きのがしなく!

M2、ポーランドの代表的な民族舞曲にはポロネーズとマズルカがあります。マズルカが農民の間で伝承されてきたのに対し、 ポロネーズは貴族の間で伝わってきたという違いがあり、堂々とした力強い音楽です。ポーランドの民族としての力強さと悲劇性を表しているのがショパンのポロネーズです。作品22の「アンダンテ・スピアナートと大ポロネーズ」を除けば、ポーランド時代に9曲ものポロネーズを作曲していますが、作品26は、ショパン自身によって作品番号が与えられた最初のポロネーズです。

M3 26歳から28歳にかけて作曲した「24の前奏曲」から、これは、ジョルジュ・サンドの一家とマヨルカ島にヴァカンスにでかけて作曲の仕上げが行われた有名な1曲。この20代後半の後半は、ショパンがジョルジュサンドと出会い、生活のパートナーとなっていく時期と重なります。ショパンにとっての人生の春、ともいうべき時代です。この前奏曲集の出版社からの前金の支払いを、ショパンはマヨルカ島旅行の費用にあてたと言われます。

◎入魂のショパン2017
日時:5月5日(金・こどもの日)、お昼1時開演
会場:東京オペラシティ コンサートホール
曲目:<第1部> エチュード集 Op.10 、エチュード集 Op.25
<第2部> 2つのポロネーズ Op.26 、 2つの夜想曲 Op.27 、24の前奏曲 Op.28
<第3部> 即興曲 第1番 Op.29 、4つのマズルカ Op.30 、スケルツォ 第2番 Op.31
2つの夜想曲 Op.32 、4つのマズルカ Op.33 、3つの華麗なるワルツ Op.34
ピアノ・ソナタ 第2番 「葬送」 Op.35
<第4部> 即興曲 第2番 Op.36 、 2つの夜想曲 Op.37 、バラード 第2番 Op.38
スケルツォ 第3番 Op.39 、2つのポロネーズ Op.40 、4つのマズルカ Op.41
ワルツ 第5番 「大円舞曲」 Op.42 、タランテラ Op.43 、ポロネーズ 第5番 Op.44
<第5部> マズルカ風ロンド Op.5 、 アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ Op.22、バラード 第1番 Op.23 、ポロネーズ 第6番 「英雄」 Op.53 、子守歌 Op.57
舟歌 Op.60 、 ポロネーズ 第7番 「幻想」Op.61


来週は、3部と4部のききどころをご紹介します!ぜひお聴きくださいね。

2017年4月スタジオで

チェリストの伊藤悠貴さんを迎えて〜後編

2017.04.10


新しい環境の方も、音楽を楽しんでまた新しい1週間を始めてくださいね!
いつもお聴きいただきありがとうございます。

チェリストの伊藤悠貴さんを迎えた2週目は・・

<プレイリスト>
M1 ラフマニノフ:チェロ・ソナタ第3楽章
M2 ラフマニノフ:春の洪水  (編曲:伊藤悠貴)
演奏)伊藤悠貴(チェロ)、ソフィア・グリャーク(ピアノ)

4月15日に、横山さんと演奏するラフマニノフの「チェロ・ソナタ」は、
伊藤さんがもっとも演奏会で演奏してきた曲、アシュケナージとの共演も思い出に残っています。

伊藤さんは、2013年にロンドンで、In Tune Orchestra を結成、指揮者としても活動しています。
指揮のイメージ練習は、朝や深夜に。それは朝はチェロの練習ができないから、と伊藤さんが語ると
横山さんは「僕は朝の練習ぜんぜんOK、やることは早めにすませて、夜はワインを飲んでいたい」だそうです。

「現代の音楽家として、現代作曲家の作品を演奏するのは使命」と感じていて、ロンドンの友人作曲家の作品を紹介する機会も多いそうです。
生きている作曲家にはいろいろ質問できるからいいですね、と横山さん。
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