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村上RADIO ~歌うジャズ器楽奏者たち~

村上RADIO ~歌うジャズ器楽奏者たち~

こんばんは。村上春樹です。今夜は「歌うジャズ器楽奏者たち」というタイトルでお送りします。
普段はそれぞれ楽器を演奏しているけど、たまには余技として歌も歌いますというミュージシャンたちを集めてみました。「あれ、こんな人が」という意外なプレイヤーが歌声を聴かせてくれます。美声もあれば、個性たっぷりな声もあります。さて、どんな人が出てくるでしょうね。

<オープニング曲>
Donald Fagen「Madison Time」


というわけで、今回はかなり渋い内容になります。でも、こういう企画って、まず普通のラジオではあり得ません。今日かかる音楽は、たぶんこの「村上RADIO」でしか聴けないものがほとんどだと思います。うちから秘蔵のLPレコードを抱えて持ってきました。ほとんどが古いオリジナル盤です。そんなわけで途中でちょっとぷちぷちっとノイズが入るかもしれませんが、例によって軽く無視してください。村上のあくまで個人的な趣味に、55分間お付き合いください。
BUT NOT FOR ME
Oscar Peterson
Romance
Verve
「歌うジャズ器楽奏者たち」。まずはオスカー・ピーターソンからいきます。ピーターソンはピアニストですが、かつては歌手としても活動していました。でもなにしろ声も歌い方もナット・キング・コールにあまりにそっくりなので、「これ、ちょっとまずいかなあ」と思ったのか、キャリアの途中で歌うことを封印してしまいました。そしてピアニストに専念して、成功を収めました。
ナット・キング・コールも、もともとピアニストだったんですが、歌があまりにうまいので、専業歌手になってしまいました。本人はもっとジャズ・ピアノをやりたかったみたいですが、仕方なく……という感じですね。オスカー・ピーターソンがピアノを弾いて歌います。
「バット・ノット・フォー・ミー」

<収録中のつぶやき>
この時代はたぶん重ね録りができないから、実際に弾きながら歌っているんだと思いますね。よくピアノを弾きながら歌えるよね。僕ならピアノを弾き間違えるか歌詞を忘れるか、どっちかだと思う(笑)。
NEXT SPRING
LES McCANN
LES McCANN SINGS
PACIFIC JAZZ RECORDS
レス・マッキャン、この人もピアニストですね。西海岸で活躍した黒人ピアニストです。やはり歌がうまくて、ボーカルのレコードも何枚か出しています。これは彼にとっての最初のボーカル・アルバム“Les McCann Sings”に入っている「ネクスト・スプリング」。マーヴィン・ジェンキンスというピアニストが作った曲です。なかなか素敵な曲だし、ジェラルド・ウィルソンの編曲も見事です。途中で入るテナーソロはベン・ウェブスター。
聴いてください。「ネクスト・スプリング」
I Remember Clifford
KENNY DORHAM
This Is The Moment:Sings and Plays
RIVERSIDE RECORDS
前の二人はプロの歌手と言ってもいいくらいのちょっとした美声で、歌も上手だったけど、この人の歌には正直なところ、「うーん」とちょっと首を傾げたくなります。歌うのは名トランペッターのケニー・ドーハム。もちろんそれなりの味わいみたいなのはあるんだけど、「わざわざこれ、レコードにするか」という印象は拭(ぬぐ)いがたいです。音程にも少し問題があります。でも怖いもの見たさというか、ついターンテーブルに載せてしまったりするんですよね。(にゃあ)
うまいけど味のないジャズ・ボーカルがいいか、下手だけど味のあるジャズ・ボーカルがいいか、迷っちゃうところですね。まずは実際に聴いてみてください。ケニー・ドーハムが切々と歌う、ベニー・ゴルソン作曲の名曲「アイ・リメンバー・クリフォード」。
BUDELLA〈BLUE SKIES〉
ELLA FITZGERALD AND BUDDY RICH
CATS MEET LADIES
ELEC RECORDS
この特集、男性の歌ばかりが続くので、女性ボーカルも少し混ぜましょう。エラ・フィッツジェラルドとバディ・リッチがかけあいで歌います。「ブルー・スカイズ」。
バディ・リッチは派手なドラミングで有名なドラマーですね。ビッグバンドのリーダーとしても活躍しました。でもこの人はもともとは歌手兼ドラマーだったんです。でも二兎を追うのはまずいと思ったのか、キャリアの初期に歌手の道をあきらめて、ドラムに専念しました。
同じ時期にやはり歌手兼ドラマーだったのがメル・トーメで、彼は逆にドラムを断念して、歌手として成功を収めました。一説では二人の間で「おまえ歌手やれよな。おれはドラムだけやるからさ」みたいな取り決めがあったということですが、そこに居合わせたわけではないので、真偽のほどはわかりません。
でもリッチさん、なにしろエラ・フィッツジェラルドと対等に渡り合って歌うわけですから、歌は本格的にうまいです。ドラマーになってからも、歌手としての活動に未練があったようで、何枚かボーカルのレコードを出しています。
聴いてください、「ブルー・スカイズ」、1947年、ニューヨークの放送局での公開録音です。最初に二人で「何を歌おうか」という愉快な話しあいがあり、結局「ブルー・スカイズ」でいこうということになります。歌詞はよく覚えていないので、途中からスキャットの応酬になります。

<収録中のつぶやき>
これ、楽しいです。もとがSP盤なんで、ちょっとぷちぷちが入っちゃうんですよね。これはレコードのせいじゃなくて、オリジナルのノイズです。
I'M JUST A LUCKY SO AND SO
Kenny Burrell
WEAVER OF DREAMS
COLUMBIA
次はギタリストのケニー・バレル。僕は数多くいるジャズ・ギタリストの中でも、この人がなにしろいちばん好きです。派手なテクニックは見せないけど、ハードでブルージーなシングル・トーンのソロがたまらないです。背後にまわってのバッキングも、そのセンスの良さにしばしば唸(うな)らされます。僕は一度ジャズ・クラブで生で聴いたことがありますが、その音に痺(しび)れました。とても寡黙な感じの人でね。
このケニー・バレルは生涯に一枚だけボーカル・アルバムを出しています。“Weaver of Dreams”というタイトルのLPです。でもそのあとぜんぜん歌っていないところをみると、あまり評判良くなかったんでしょうかね。それとも本人が「恥ずかしいから、もう歌はいいや」と思ったのか、そのへんはわかりませんが、まあ僕としては彼のギター演奏が聴けるだけでオーケーです。
デューク・エリントンの名曲“I'm Just a Lucky So and So”を聴いてください。途中で入るテナーサックスのソロはボビー・ジャスパーです。
I WISH I KNEW
JIMMY ROWLES (and his Friends)
KINDA GROOVY!
Capital
ジミー・ロウルズは西海岸で活躍したジャズ・ピアニストですが、わりに地味な活動をしていた人なので、よほどのジャズ・ファンじゃないとご存じないかもしれません。表にしゃしゃり出るよりは、裏にまわって念入りな仕事をするのを好んだ人でしたから。ジャズ・ミュージシャンたちの間ではとても人気が高くて、多くの人が一緒にプレイをしたがりました。スタン・ゲッツやズート・シムズは、彼と共演した素敵なアルバムを残しています。この人の優れた点は、なにしろたくさんの曲を知っているところで、普通の人が聴いたことのないような、隠れた名曲を積極的に取り上げてくれます。趣味の良さが身上というか。そういうところに惹かれるジャズ・ファンもきっとたくさんおられるでしょう。
このアルバムのボーカル・タイトルは“Kinda Groovy!”っていうんですけど、ロウルズさんは例によって渋い曲をひと揃(そろ)い集めて、ギターとベースとドラムをバックに、ピアノを弾きながらリラックスして歌っています。こういうのって、うん、大人のジャズですよね。
I'VE LOST YOUR LOVE
MILT JACKSON
Meet Milt Jackson
Savoy Records
ミルト・ジャクソンはヴァイヴラフォン奏者、MJQのメンバーとしても有名ですね。え、ミルト・ジャクソンが歌を歌うの?と驚かれる方も多いかと思います。彼が歌うことってほとんどありませんが、“Meet Milt Jackson”というSAVOY盤では一曲だけ歌っています。1964年にもイタリアのバンドをバックに歌っているレコードを出していますが、今日は最も初期の彼の歌を聴いてください。“I've Lost Your Love”、彼が作った曲です。吹き込みは1954年、テナーサックスはウォルター・ベントン、アルト・サックスはフランク・モーガンです。
I'M GONNA MOVE TO THE OUTSKIRTS OF TOWN
JIMMY SMITH
STAY LOOSE...JIMMY SMITH SING AGAIN
Verve
オルガン奏者ジミー・スミスが歌います。決して美声っていうんじゃないんだけど、このブルーズ感覚、かっこいいですよね。曲は“I'm Gonna Move to the Outskirts of Town”、1936年に作られた古いブルーズ曲で、レイ・チャールズが歌ってヒットさせたこともあります。これから町の外れに引っ越すよ、という歌です。誰にも邪魔されずに二人で静かに暮らそうぜ。
ジミー・スミスはブルーノートやVerveからすごくたくさんレコードを出していますが、僕が個人的に好きなのは、ケニー・バレルと組んだ“Blue Bash!”っていうアルバムです。ジミー・スミスって、楽器の性格上どうしても「ほら、どうだ!」的な外連味(けれんみ)が出てきちゃうんだけど、このレコードはバレルがリーダーということもあって、そういう派手なところがなくて、二人のブルージーで内省的なインター・プレイがたっぷり楽しめます。いいですよ。僕は高校時代にこのアルバムを買って、いまでも愛聴しております。
ジミー・スミスが歌います、“I'm Gonna Move to the Outskirts of Town”、アレンジと指揮はトム・マッキントッシュです。

<収録中のつぶやき>
僕は青山のブルーノートでジミー・スミスを聴いたことがあります。もう亡くなってしまったけどね。かっこいいですね。
ON THE SUNNY SIDE OF THE STREET
DIZZY GILLESPIE
SONNY SIDE UP
Verve
次はトランペッター、ディジー・ガレスピーです。彼がソニー・ロリンズとソニー・スティットという二人の重量級テナー・サックス奏者を迎えたセッションから、“On the Sunny Side of the Street”を聴いてください。最初に三人がそれぞれにソロをとって、どれも素晴らしいソロなんだけど、最後の仕上げにガレスピーが歌います。
この歌がなかなか味があってご機嫌なんです。ガレスピーはサービス精神の旺盛な人で、余興にちょくちょく歌を歌っていますが、だいたいコミカルなものが多くて、普通の歌をこんな風にきちんと正面から歌っている例も珍しいかもしれません。

<収録中のつぶやき>
うん、これが、ソニー・スティットのソロですね。……ここでガレスピー……、これがソニー・ロリンズ。最後のテナーのバッキング、いいですよね、しびれますね。
THAT'S THE WAY TO BE
SONNY STITT
SONNY STITT SWINGS THE MOST
Verve
今度は、前の曲でテナー・サックスを吹いていたソニー・スティットが「じゃあ、俺も」という感じで一曲歌います。別のアルバムですけど、彼はここではアルト・サックスを吹いています。決して「うまい」っていう歌じゃないですけど、それなりに練れた味があります。そしてなにより「え、あのソニー・スティットが歌を歌うの?」という驚きがあります。僕が知る限り、この人が歌ったものはこれ以外にないと思います。貴重です。聴いてください。
“That's the Way to Be”「そうこなくっちゃ」という歌です。

<収録中のつぶやき>
この人もともとはアルト・サックス奏者なんです。チャーリー・パーカーに似すぎていると言われて頭にきて、テナー(サックス)にかえちゃったんです。パーカーが亡くなったら、またアルトを吹き始めた。
WALKIN'
CHET BAKER
THE MOST IMPORTANT JAZZ ALBUM OF 1964/65
COLPIX RECORDS
他にも歌うミュージシャンはけっこういます。有名なところではジョージ・ベンソン、ジャック・ティーガーデン、それからもちろんルイ・アームストロング、ナット・キング・コールなんかもいます。今日はそういう歌手として定評ある、有名な人たちには遠慮してもらいました。
でも、そうはいっても、この人はやはり気持ち的に外すわけにはいかないかな、ということで、いちおう最後に持ってきました。
このへなっとした歌声を聴かないと収まらないというか・・・・・・うーん。
チェト・ベイカーが歌います。「ウォーキン」。
ELIS
渡辺貞夫
ELIS
ELEKTRA
今日の最後の曲は渡辺貞夫さんの「エリス」です。ブラジルの歌手、エリス・レジーナに捧げた、貞夫さん自作の美しいバラードです。1988年、リオ・デ・ジャネイロでの吹き込み。ブラジルのミュージシャンたちがバックをつとめています。
歌うジャズ器楽奏者たち、いかがでしたでしょうか?
ちょっと渋すぎたかな。どうもすみません。
でもまあ、たまにはいいですよね。こういうの、僕の趣味です。


  *
そして、昨年7月、早稲田大学の大隈記念講堂で行った山下洋輔トリオのライブが、アナログ・レコードとして発売されました。「村上春樹presents 山下洋輔トリオ再乱入ライブ」。これは僕が司会をしてやったコンサートのライブ録音です。本当に素晴らしい演奏だったので、ぜひ皆さんに聴いてほしいと思います。詳しいことは、番組のサイトを見てください。
  *

さて、今日の最後の言葉はフランス人歌手にして作詞家、映画監督にして俳優のセルジュ・ゲンスブールさんです。娘のシャルロットさんも有名ですね。私生活が奔放だったことでも知られています。彼は人生でいちばん大切なことは何かと訊かれて、こう答えています。
人生で大切なことは、まずセックス、酒、タバコ、書くこと。そしてまたセックス、それから娘のシャルロットかな……。
とてもラブリーな答えですね。なかなか僕なんかには言えませんが。
それではまた来月。

リスナーのメッセージに答えました

リスナーのメッセージに答えました

にっく・じゃがー(34、女性、広島県)

ラジオ、楽しく聴かせていただきました。ありがとうございます。今回の~再びアナログ・ナイト~は、アーマッド・ジャマルさんのJust The Way You Are (素顔のままで)が一番すきでした。ジョギングのお話もなんだか素敵でした。一周につき二回すれ違いますよね。質問なんですが、村上さんはお蕎麦とうどんだったら、どちら派ですか?ちなみにわたしはうどん派です。子どもの頃、たまに土日におばぁちゃんとお出かけしたときに、いつもデパートに入っているうどん屋さんに連れて行ってもらってたんですが、おばぁちゃんもわたしの家族もなぜか、他のメニューもあるのに大体、天ざるうどんか天ざるそばのどちらかしか頼まなくて、わたしは天ざるうどんがすきでした。ラジオ、これからも楽しみにしています。
僕は関西生まれの関西育ちなので、昔はうどんばかり食べていましたが、東京に出てきてからはすっかり蕎麦好きになりました。天ざるそば、いいですね。食べたくなってきました。蕎麦屋さんでは、蕎麦焼酎のそば湯割りを好んで飲みます。
ぐりきち(49、女性、埼玉県)

冒頭から「街とその不確かな壁」を連想する選曲にニヤリとしました。今回もよくこんなコレクションをお持ちだなぁというラインナップを楽しませていただきました。ランニングの周回ですが,私はどっち周りかにこだわりはなくて,スタート地点からなるべく真っすぐ進める距離が長いほうに走り始めることに気が付きました。なんだかすぐ曲がるのが落ち着かないんです。
うちにはちょっと変なレコードがたくさんあります。ときどき「なんでこんなものがうちにあるんだろう?」と自分でも首をひねってしまうことがあります。そういうレコード、これからもかけていきたいです。
初めてお便りします。私は都内の某お嬢様系女子大で、卒論に村上春樹論を書いた人間です。春樹さんのように天啓が降りてこないかなー・・って神宮球場に一人でふらっと行っているうちに、弱くても野球を楽しんでいるようなチームカラーになんだか癒されて、スワローズのファンにもなりました。村上選手が出てくる前のダントツに弱い時期でした。夕暮れから月明かりの夜へと変わっていく神宮球場の風景はとても美しく、そこには人間的で平和な風が吹いていて、都会でも人は優しいな、空はきれいだなーと思わせてくれた場所でした。ですから、春樹さんがラジオで「外苑の景色を壊さないで」とおっしゃってくださった時は、嬉しくて涙が出ました。100年近く前の人たちが、会うこともない未来人である私達のために作ってくださった公園であり球場です。感謝の気持ちいっぱいでその場を楽しませていただきながら、会うこともない未来の人へ繋いで行きたい場所です。たくさんの人が春樹さんの言葉に感謝を感じていると思いますが、私もその一人として感謝のメールをお送りします。
神宮外苑というのは東京都心にあるちょっと特別なエリアです。そこに足を踏み入れるだけで、心の色合いがいつもちょっとだけ変わるような気がします。都市にはそういう特別な場所が必要なんです。目先の効率だけを考えて、古くからある樹木を伐採して高層ビルを建てるなんて、どう見ても間違っていると思うんだけど。
ほっち(25、女性、東京都)

25年生きてきた中で、自分が何曜日生まれかなんて気にしたことがなかったですが、村上さんの新作を読んで、水曜日生まれだということに気付きました。確かにあまりぱっとしない地味な25年を過ごしてきましたが、自分なりに幸せを感じる瞬間もあります。そんな瞬間を大切にけなげに生きていこうと思います。それと村上さんも水曜日生まれの仲間だと思うと、頑張れる気がします。マット・モンローの曲は物憂げで切ない印象ですが、水曜日生まれを応援してくれるようにも感じました。
申し訳ありませんが、あの歌の歌詞はかなり暗いものです。水曜日の生まれだけど、やっとこれで幸福になれるかなと思ったのに、やっぱり恋人が去って、また独りぼっちになってしまった。仕方ない、そういう運命なんだから。しくしく……というような内容だったと思います。すみません。
献血でくれたガルボ(24、女性、北海道)

北海道に引っ越してきて3ヶ月。「中途半端」も「途中半端」も、どちらも誰かが言っているのを一度も聞いていません。北海道の人は、「できるところまででOK」という大らかさがあるのかなぁ。それとも、完璧主義?今後も密かに調査してみたいです。
そうですか。これからも調査を続けてください。
アニマ エテルナ(53、男性、東京都)

普段、私はクラシックとジャズを聞いているのですが、番組で放送されるジャズはもちろん、それ以外のジャンルの音楽の中にも興味深いものや心に残るものがいろいろとあって、毎月楽しみに拝聴しています。また、曲と曲の間の村上さんのさまざまなコメントもとても愉しく、そのようにして毎月テーマを決めて番組を作るのはなかなか大変なことと思いますが、できるだけ村上さんには番組を続けて頂けましたらと思います。
ありがとうございます。僕は番組のための選曲をするのが楽しみで、そういうのはぜんぜん苦労ではありません。かけたい音楽はまだまだいっぱいあります。この番組、事情さえ許せば、できるだけ長く続けたいと思ってはいるのですが。
黒船花子(33、女性、東京都)

2年前からほぼ毎日神宮外苑を走っています。通勤ランなので、一番早いルートなら、時計回りで走ります。そしてほぼ毎日、タランティーノ監督に似ている人(雰囲気は少し柔らかいかな)に出会います。最近ひざの故障でしばらく通勤ランを休んでいましたが、タランティーノさんが散歩を続けてますでしょうか。
走っているとよく顔を合わせる人っていますよね。うちのまわりには、朝早くよく顔を合わせる猫さんが二匹います。一匹は呼ぶとやってきて、ちょっとだけ頭を撫でさせてくれます。
水曜日生まれの山羊座(24、女性、東京都)

私は最近転職のために応募書類を準備しています。“自己PR”や“これまで何をしてきたのか”みたいなことを書いて提出しなければいけないのですが、私にはこれらを完成させることがとても大変です。文章を書くことは難しいですね。村上さんに何かアドバイスを頂けたら嬉しいです。暑い日が続きますが、ご自愛ください。
小説家としてデビューしたとき、編集者に「村上さん、小説家はね、原稿料をもらうごとにうまくなっていくものです」と言われました。考えてみれば、たしかにそういうところもあるかもしれない。でもなかなか普通、原稿料もらえませんよね。
チャレンジどらねこ(58、男性、徳島県)

毎回、素敵な選曲に心地よく、楽しみにしています。小生、4年ぶりにトライアスロン大会に参加します。あっという間に来年は、60歳のクラスという現実に愕然としています。一年毎の積み重ねと習慣の大切さが身に沁みます。
僕はトライアスロンはリタイアしました。水泳スタート時の蹴り合い、どつきあい、もうそういうのに耐えられないかも。がんばってくださいね。大丈夫です、あっという間に70代になります。
名前をつけて欲しい猫(39、女性、東京都)

先日村上さんの新作を読み豊かな読書時間を味わいました。小説を没頭して読む時間、ビジネス書なんか読むのと全く違う読書の喜びを教えてくれたのは村上さんの小説たちです。中学生の頃にハリーポッターシリーズで本を夢中になって読む感覚を体験しましたが、大人ってからはしばらく遠ざかっていたことです。今は月に一回ラジオで村上さんの声とちょっとシニカルなトークを聴くのが何より楽しみです。話は変わりますが、わたしは1984年1月12日生まれです。ぜひ1月12日生まれの会員メンバーに入りたいです。海外での滞在記も好きなのでぜひまた書いてもらえたら嬉しいです。
はい、あなたには「ジャック・ロンドン・クラブ」会員番号1002を差し上げます。おめでとうございます。1月12日を一緒に祝いましょうね。しかし僕のトーク、シニカルですかね?本人は「健全なユーモア」と思っているんですが。
もんもんもこもこ(47、女性、東京都)

毎月楽しく拝聴させていただいています。村上さんが持っているレコードをかけるのが素敵です。当たり前のようでいて、そういう番組はありません。90年代の音楽特集を希望します。質問。この春、出版社に就職することができ、長年の夢であった、編集者としての一歩を踏み出すことができました。そこで村上春樹さんにご質問なのですが、村上さんの考える、理想の編集者とはどのような姿なのでしょうか?今後の、作家さんとのお付き合いの参考にしたいと思います。よろしくお願いいたします。
僕は実務が苦手な人なので(締め切りは忘れる、ものは失くす、事実は間違える、不適切な冗談を言う)、そういう実務面をきちんとフォローしてくれる編集者がいるととてもありがたいです。それがまず基本です。あとのことはまあ適当というか、流動的というか、成り行きです。作家と編集者といっても、所詮は人と人との関わりですから。
羊文学男(54、男性、東京都)

10代の終わりから村上さんの作品を拝読し、登場する音楽で知らないものがあれば聴いてみる、という形でいろいろなアーティストや作品に出会うことができました。特にビーチボーイズ、なかでもペット・サウンズは、失恋してつらいときに何度も聞き返したりしましたし、最近は離婚してつらいときにセロニアス・モンクに慰められました。村上さんに教えてもらった音楽たちは、私の人生の宝物です。改めて感謝申し上げます。番組でかけてくださる音楽は、ちょっとマニアックで他の番組ではかからないものが多い印象ですが、プライベートな解説でぐっと身近に感じ、じわじわ体に染み込んできます。村上さんがますますご健康で100歳までこの番組が続き、TOKYO FMでいちばんの長寿番組になることを期待しています!
昔は100歳まで生きるつもりだったんだけど、最近はちょっと弱気で、95くらいかなとか思っています。
アデレー丼(52、女性、東京都)

今、仕事で「街とその不確かな壁」を読むにはピッタリの南半球にいるのですが、暖炉の火があっても、やっぱり寒いのはイヤです。でも、せっかくだから、暖炉に林檎の木を焚べて林檎の香りの中で読書したいと思っていますの。ですから林檎の木を手に入れなくては。これがなかなか難しいんですけどね。
オーストラリアで林檎の木を見つけるのはむずかしいかもしれないですね。ユーカリとかで我慢してください。ワラビーによろしく。
ひよこ(24、女性、鹿児島県)

村上RADIOを聴いていると音楽と執筆が創作意欲を刺激する良い関係なのがすごく伝わってきます。
私も村上春樹さんのような聡明かつ思慮深く、音楽の造詣が深い魅力的な大人に憧れます。村上RADIOのおかげでラジオを聞く習慣がとても増えたのでもっといろんな音楽をラジオで発見したいと思います。
そう言っていただけるのはありがたいのですが、「聡明で思慮深く」なんて言われると、誰のことかとあたりを見回してしまいます。実際の村上は……まあいいや、それは。でもとにかく、番組を気に入っていただけて嬉しいです。これからも聴いてくださいね。
ボルフィー(68、男性、北海道)

先月、4年ぶりに開かれた「サロマ湖100kmウルトラマラソン」に参加しました。70kmでリタイアでした。春樹さんは完走されていますよね。別のマラソン大会で知り合った素敵な女性に久し振りに再会しました。春樹さんが、ジョギング中に会ったという女性の話を聴き、思い出しました。「途中半端」、既視感があります。多分、母が「途中半端」と言っていたんだと思います。亡くなっているので、確かめられませんが。今回も、春樹さんチョイスの音楽とトークを、わが家の猫(ウッディーとジェシーと言います)たちと一緒に楽しみました。これからもよろしくお願いします。
はい、サロマ湖100キロ、しっかり完走しました。11時間15分くらいかかったかなあ。もう二度と走りたくありません。ああ、疲れた。途中で見かけたキタキツネの一家は可愛かったけど。
猫さんたちによろしく。
ヒロウッド(59、男性、鳥取県)

6月25日にオンエアーされた、ジョン・バリーとマット・モンローの「さらばベルリンの灯」は野生のエルザ「ボーンフリー」とともに好きな曲です。ジョン・バリーが音楽を担当した、1974年公開、グレゴリー・ペック製作、ジョゼフ・ボトムズ、デボラ・ラフィン出演「ダブ」は青春映画の佳作です。ヨットで世界一周を目指す若者を淡々と描き、ジョン・バリーの音楽も秀逸でした。鳥取では大音響センサラウンド方式「大地震」と2本立てで公開されましたが「ダブ」の爽やかな映像と音楽は今も鮮明に覚えています。CD、DVD化はされていないかもしれませんが、もしLPアナログ音源がありましたら「ダブ」をリクエストします。
僕はその映画見ていません。ジョン・バリーが音楽を担当していたんですね。しかし「大地震」と二本立てというのはすごいなあ。センサラウンド方式、そういうのありましたねえ。
ラッロ(21、男性、新潟県)

6月25日の放送楽しく拝聴しました。トークも選曲も楽しくて、あっという間の一時間でした。とりわけグッときたのは「Just The Way You Are」です。後半の突然視界が開けるようなあのギター、そしてピアノ、とてもかっこいいです。神宮外苑の再開発についてのお話も響くものがありました。さて、私は現在大学4年で就職活動中なのですがなかなかうまくいきません。地元のテレビ局を志望しているものの一社からも内定をもらえませんでした。新たに志望する会社を探さなくてはいけないのですが、魅力を感じていた職種への道を絶たれたいま、なかなか前向きになれません。周りに流されて就職することに首をひねりながらも、かといってフリーターになる勇気もなく途方に暮れています。自分自身が何を求めているかわからないまま、時間だけが進んでいくことに焦りを感じる毎日です。村上さんは若い頃、この先どうやって生きていこうかとご自身の将来を案じるような時期はありましたか。
僕は就職しないで、借金をして自分で店を始めたので、「自分の将来を案ずる」暇さえありませんでした。荒れた海に突然放り込まれたようなもので、とにかく生き残ることで精一杯でした。決してそういう生き方をお勧めするわけではありませんが、少なくとも僕の場合、途方に暮れている余裕はありませんでした。というわけで残念ながら、あなたへの有益なアドバイスはできそうにありません。すみません。
1503番目の羊(42、女性、宮崎県)

こちらには音楽に詳しい村上さんのファンの方からのメッセージがどしどしと寄せられてくると思うのですが、私は難聴があるので音楽には疎く、どうしても公式サイトのオンエアレポートを読んでの感想になってしまいます。申し訳ありません。今年1月~5月、村上さんはボストンの大学に行かれるということを雑誌BRUTUSのインタビューで読んでいたので、『村上RADIO』はどうなってしまうのだろうと心配していたのですが、続けてくださっているのでほっと安心しました。私は村上RADIOを毎回2度聴いています。一度目は19時からの放送を、二度目は公式サイトが更新されてからじっくり読み、ラジコのタイムフリーで オンエアレポートを読みながら聴いている形です。もちろんイヤフォンをつけています。言葉を明確に聞き取ることは難しいんですが、村上さんの声を聴くと まるで猫が近くにいるみたいに癒されて安心します。音楽は感覚的に「この曲素敵だなぁ」と思うこともしばしばあり、このラジオがきっかけでマルーン5とGorillazはCDを購入しました。毎回オンエアレポートもエッセイみたいに愉しく読ませていただいております。特に『今日の最後の言葉』がお気に入りで、どんな名言が飛び出すんだろうと ご馳走の後のデザートみたいで楽しみにしているんです。「スコアボードを振り返らない」村上さんの解説があるおかげで言葉の意味が分かるのでありがたいです。
番組を丁寧に聴いていただいてありがとうございます。できるだけ滑舌をはっきりさせて喋るようにしますね。ゴリラズとマルーン5、気に入っていただけてよかったです。かっこいいですよね。
ボストンに滞在している間は「録り溜め」したものでしのぎました。「録り溜め」大変だったですが。
ここ(39、男性、長野県)

毎回、楽しく聴いています。素敵な楽曲は、Apple Musicで探してプレイリストに追加しています。最近のお気に入りは前々回のアカペラ特集で流れたサザンオールスターズのカバー曲です。さて、村上さんに質問です。私は私立の女子校で国語の教師をしています。40才手前で、妻子と住宅ローンがあります。
15年以上教師をしていますが、年々、生徒の読書離れ・小説離れが進んでいるような気がしています。
私は小説が好きで教師になったようなものなので、寂しい気持ちでいっぱいです。村上さんは小説の未来についてどのようにお考えでしょうか。
小説を読む人が少なくなったという声をよく耳にします。世の中にこれだけ娯楽があふれかえっているんだから、それはもうある程度仕方ないことだと僕は思うんです。でも、「それにもかかわらず、なおかつ小説を読む」という人たちの底力を、僕は期待したいと思っています。それが本物のコアな読者だから。それにアナログ・レコードが復活したみたいに、小説もそのうちにまた復活するんじゃないでしょうかね。
温泉たまご(41、女性、神奈川県)

いつも番組を楽しく拝聴しています。私は村上さんの声に安心感を覚えているようで途中で寝ている事がしばしばあります。(そんな時は聞きかえしてます。)恋愛、結婚観について質問です。私は40代前半の女性で未婚です。私は物事や対人に対して1人で考えるタイプで自分自身をコントロールするだけで精一杯でした。年齢を重ね、周りに目が向くようになり恋愛や結婚に対して前向きな気持ちが芽生えました。村上さんは恋愛と結婚についてどう考えておられますか。漠然とした質問ですがお答えいただけると幸いです。
僕は、「結婚とは何か?」みたいなことをきちんと考える前に、勢いで学生結婚しちゃった身なので、あなたの質問にうまくお答えすることができません。結婚って、勢いで一気にやっちまうしかないような気がします。いちいち深く考え始めるとむずかしいです。
しん(47、男性、千葉県)

いつも楽しく、興味深く拝聴しております。Greg PhillinganesのGirl Talk、爽やかで気持ちのよい曲ですね!私は神宮球場のすぐ前にある高校に通っておりました。あの周辺は毎日歩いていましたので凄く思い入れがありますし、神宮球場も一番好きなスタジアムです。特にナイトゲームは最高です!ですので、春樹さんが神宮外苑の再開発について発信してくださったこと、驚きと共に嬉しく思います。ありがとうございます。都心ながらゆっくりと時間が流れるようなあの美しい神宮外苑の風景、是非今のまま残していただきたいですよね。
ほんとにそうですよね。あのあたり、時間の流れ方がなんだかとても心地よいのです。
タノック(62、男性、埼玉県)

私はジャズも好きですがクラシックもよく聴きます。先月レコード芸術という雑誌が休刊になりました。最近は読む機会も減っていましたが、無くなると聞くととても寂しいです。村上さんはレコード芸術は読んでいらっしゃいましたか?
「レコード芸術」、高校時代に愛読していました。あの雑誌にはいろんなことを教えてもらいました。当時は村田武雄さんとか、志鳥栄八郎(しどり えいはちろう)さんとか、立派な評論家がたくさんおられました。最近はまったく読んでいませんでしたが。でもいずれにせよ、「レコ芸」の休刊はたしかに心さびしいですね。時代がひとつ終わったというか。
まだ名はないですよ~ん(62、女性、千葉県)

我が家のハンディラジオは、不思議なことに優しくそっと包み込むように持っていないと「村上レディオ」を受信することができません。どこをどう触ったらいい音になるかのチカラ加減がとにかく微妙です。更に、ご機嫌の悪い時には、小さなアンテナを握ったりなでなでしないと、すぐに他局に乗っ取られてしまいます。こうして約1時間の放送中は、見えない電波をキャッチするのに、ベッドの上でくるくる回転しながら右往左往している状況です。そんな「うちのレディオ様」ですが、ピタリとはまったときには、「あ~ら、あなたやればできるんじゃないの~。」と感心するほどしびれる音を聴かせてくれるので、今宵もまた凝りもせずに手に取っちゃうんですよねぇ~。
ご苦労の様子が目に浮かびます。いろいろとありがとうございます。しかし全国でいろんな人が、いろんなかたちでラジオを聴いていらっしゃるんですね。ラジオって、なんか面白いです。僕はケーブルをチューナーに接続してFM放送を聴いているので、アンテナとは無縁ですが。
ぽんちゃん(39、女性、兵庫県)

SNSで番組の告知をたまたま見かけ、初めて拝聴しました。私にとって村上さんは「雲の上の人」という感じで、すごく遠い存在でした。ですが今回初めてお声を聴いた瞬間、グッと距離が近くなりました。それはイメージの中にいる「あの村上春樹さん」ではなく、声の先にいる一人の人間としての「村上さん」を初めて実感できたからだと思います。こんな風に感じられるのも声で繋がるラジオだからこそだと、ラジオの魅力も再発見させもらいました。選曲も新旧色々な曲が聴けて面白かったです。そして曲の途中で「ここでガラッと雰囲気が変わるんです」とか「だんだん盛り上がっていく!」などとおしゃべりが入るのが、まるで一緒にレコードを聴いているようで楽しかったです。
僕はかなりの高所恐怖症なので、雲の上に置かれたりすると、怖くて生きていけません。できるだけ地上近くに置いておいてください。僕は普通の人です。ただ机に向かってものを書いているときは、「ちょっと普通ではなくなる(ときもある)かもしれない」という程度のものです。あとはほぼ普通のヒトです。ほんとに。
Aleaf(33、女性、その他)

中国広東省からのリスナーです。日本語はまだ上手ではありませんが、村上さんの声を聴いたり、おすすめの音楽を聴くと、いつもリラックスした気持ちになります。特に海外の読者からの手紙に対する回答のコーナー(特に中国の読者からの手紙)があればいいなと思います!
中国で聴いてらっしゃるんですね。ありがとうございます。日本語、がんばって勉強してください。語学習得はとにかく手間を惜しまず、我慢するしかありません。
自由なランナー(67、男性、東京都)

6月25日の放送もとても興味深く聴かせていただきました。ELVIS PRESLEYの「Blue Moon」を取り上げ、エルヴィス歴50年のマニアとしては嬉しかったです。この際、村上さんが「僕はこれ、サビの部分のコード進行を忘れちゃったからじゃないかと思うんだけど(笑)。面倒くさいからサビ抜きで行っちゃえみたいな感じで、よくわからないんだよね。謎に満ちている。」と話されていたことに、とある資料からの引用を。ヒントになるかもしれません。
(*自由なランナーさんが引用してくださった英文の出典文献は省略します。)
なるほど、そういうことだったんだ。しかしブリッジ(間奏)を全部すっぽかすなんて、ほんとに大胆ですよね。やはり天才だったかも。
ヤタガラス(43、男性、北海道)

僕は北海道生まれ、北海道育ちの43歳です。北海道から出て生活したこともありません。今まで生きてきて「途中半端」と言っていた人は1人だけ。高校生だった頃、同級生の女の子がそうでした。たぶん一部の世代とか地域で使われていただけで、そんなメジャーではない気がします。僕としては、むしろ「ふっつく」という言葉の方が身近でした。小学生の頃、ほとんどの同級生が「くっつく」を「ふっつく」と言っていました。なんか頭悪そうなので、僕は言わなかったけど。
「途中半端」はだんだん消滅の方向に向かいつつあるみたいです。がんばれ、めざせ「広辞苑」と言いたいですが(めざせ「甲子園」のもじりです)。
銀のスプーン(45、女性、新潟県)

林ヒロシさんの片道切符、とても良かったです。今更ながら、当時の日本の楽曲のクオリティーに驚くとともに、坂本龍一さんの粒だつようなピアノが素敵でした。明治神宮外苑の事など、坂本美雨さんも喜んでおられるだろうなと思いながら聞いていました。(私も木を切って欲しくないです)いつもマニアック?で素敵な楽曲をありがとうございます。まだまだ音楽初心者ですが、毎月の心のオアシスとして楽しみにしています。残念ながら、撫でる猫は昨年亡くなってしまいましたが。(でも村上さんのラジオは猫を撫でるくらい落ち着きます)
猫、気の毒です。神宮外苑再開発、どんどん進められていくみたいですね。政治とお金がいったん結びついてしまうと、もう止められない……というのは切ないです。
JP(28、男性、東京都)

先月の放送では、春樹さんの神宮外苑ランニング話が印象的でした。ランナー女性との関係は一番美しい形かもしれないと憧れてしまいました。こういう日々の心の動きが春樹さんの書かれる文章に瑞々しさを与えているんですね。ところで私も神宮前の再開発には大反対です。何とかなりませんかね。
なんとかしたいですが、状況はなかなか困難みたいです。
さつまいも畑のもぐら(40、女性、石川県)

村上ラジオ毎月楽しく聴かせて頂いています。月に一度お楽しみがあるって、いいものですね。月末の日曜日が近づくとウキウキします。わたしは市営住宅住まいなんですが、近くに住む地主さんと仲良くなり、5年ほど前から土地を借りて畑をしています。なかなか広い土地ですが、1年間5千円という激安特価で貸してくれており、その5千円をお渡しする際も、毎回きまって、いいよいいよと、地主さんは受け取るのをためらわれます。とても優しい人です。その畑で、4人家族が食べる分だけの野菜をちまちまと育てています。ラジコで村上ラジオを流しながら農作業をしていると、とてつもなく幸せな気分になります。若かりし日の春樹さんが石川県を訪れた際、畑をしてる人からトマトを貰って齧って、それがとんでもなく美味しかったと仰ってました。春樹さんがまた石川県をふらっと通りかかる事を期待して、今日もトマトに張り切って水やりをしています。春樹さん、通りかからないかな~。
真夏のもぎたてトマトの丸かじり、おいしいですよね。また食べてみたいです。ところでアイスランドのトマトってかなり美味しいです。そこら中で湧き出る温泉をつかった温室栽培なんだけど、アイスランドでトマトがおいしいって、なんか不思議な気がしますよね。
55takataka(58、男性、愛知県)

プレゼント希望の書籍は「ふわふわ」です。それは、安西水丸さんの絵が大好きだからです。村上さんの文章に、安西さんの絵が入った時、安西さんの絵に、村上さんの文章が乗っかった時、どちらかわかりませんが、お二人の言葉と絵の掛け合いが、大好きだからです。最近、安西さんの絵を集める癖ができてしまい、もちろん、高価な絵ではなくて、古本屋で見つけた雑誌の挿し絵だとかです。「失ってから、その存在の大切さを知る」でしょうか、、、村上さんにとって安西さんは、どんな存在だったのか、安西さんの絵に合う音楽はどんな音楽なんでしょう。
水丸さんは僕にとって素敵な年上の悪友というところでした。エピソードはいっぱいあるんですが、人前では言えないことが多いので、そのうちにこっそりと。
イボンマラヤ(68、女性、北海道)

北海道在住歴40年ですが、確かに「途中半端」って聞きます、自分では使いませんが。「なしてよ~途中半端なことしてんだか…」(訳:どうして、まだ先は長いのに途中で投げ出すの?)という具合に。でも、そもそもは誰かが「中途」を「途中」と間違えたのかもしれませんね。
しかしそういう「地域限定語」って楽しいですよね。全国の言葉が画一化されてしまうと詰まりません。大事に使ってやってください。
じのん(54、女性、長崎県)

私はアマチュアのビッグバンドに所属しているのですが、今回、終盤にかかった「Girl Talk」の曲紹介があった時に「もしや」と思って聴いていたら、現在練習中の曲ではないですか。しかも、ファンキーでノリノリの感じのアレンジで「へえ~」となりました。原曲がスローな曲なだけに、このアレンジには驚きました。こういう驚きのアレンジに出逢えるのも、村上radioの良さだと思います。今後も楽しみにしております。
グレッグ・フィリンゲインズの「ガール・トーク」、昔はよく聴いていたんだけど、久しぶりに聞き返してみました。1980年代のフュージョンの香りがぷんぷんして懐かしかった。たしかにこういう曲って、ほかではまずかかりませんよね。
リトりんご(62、女性、香川県)

アナログレコードの音、素敵ですね。最近、昔むかしに買ったレコードをまた聴くようになりました。でも、レコードの手入れってなかなか面倒ですよね。音楽仲間にはお風呂に入れるとかいう人もいますが、村上さんこだわりのレコードのお手入れ方法とか、その楽しみとかあったら教えてください。
僕は医療用の柔らかな布で、きれいな水を使ってただごしごしと磨いています。とくべつなものは何も使いません。力を込めて、愛情を注いで丁寧に磨いてあげること、これがなんといっても最大のコツです。
いくつになっても小説がダイスキ(55、男性、神奈川県)

6月の放送はたまたま実家に帰っており、83歳になる母と私の妻の3人で、夕食後にのんびりと聞くことになりました。冒頭でハルキさんが、猫の頭でも撫でながら聞いてくださいと、言っておられましたね。それを聞いた母が「そうねえ、でもあの子、もういないからねえ」と呟くように言いました。昨年の冬に、母が大事に飼っていた17歳になる猫が死んでしまったのです。その後は、死んでしまった猫の思い出話を、母が楽しそうに話し出しました。私と妻は、ハルキさんの選曲と声をBGMに、そんな母の話をのんびりと聞き、久しぶりに良い時間を過ごすことができました。ありがとうございました。
猫、お気の毒です。新しい猫がどこかからひょいと出てくるといいですね。
泥游子(63、男性、北海道)

当方、ここ40年以上北海道在住ですが、6/25の放送で「中途半端のことを途中半端と言います」と聞き、驚いています。北海道と言っても広いですし、地域なのか、年代なのか...20歳を過ぎた娘に聞いたら「学校の先生が言っていたけど、昔のことなので小・中どちらかも覚えていない」との事でした。 話は変わりますが、北海道では市電が「電車」で国鉄(JR)は(新型の電車でも)全て「汽車」で、私も高校は「汽車通(きしゃつう)」でした。「途中半端」も、もしかしたら古き良き時代の名残かも知れませんね。
そうですね。北海道は広いですものね。言語的にもばらつきがあるのかもしれません。僕は狭い阪神間の育ちですが、西宮市と芦屋市と神戸市の間にもかなり言語的ばらつきがありました。
さくら飴(64、女性、大阪府)

村上さんの放送を一緒に聴いていた夫が「村上さんてお金持ちなの?」って聞いてきました。私もよく知らないまま「芦屋や京都にお家を何軒も建てた谷崎潤一郎や後に重要文化財になるような古美術品を買った川端康成とは違うかも」って答えてしまいました。「でも古いレコード盤をたくさん持っておられるし」ってフォローになってない事を言ってしまいました。すみません。
二十代の頃は借金に追われて暮らしていました。毎日毎日、働きづめだった。でも自分が貧乏だとか、そういう風には思いませんでした。それなりに楽しかったから。今は借金に追われてはいませんが、自分が金持ちになったとか、そういう風には考えません。やはりそれなりに楽しく生きているから。谷崎とか川端のことはよくわかりません。
ちゆせ(33、女性、千葉県)

『街とその不確かな壁』に出てくるブルーベリーマフィンとコーヒーがとてもおいしそうでした。村上春樹さんの小説に出てくる食べ物は、実際の生活の中で食べたものを書いているのでしょうか。最近は喫茶店やカフェに行くたびにブルーベリーマフィンを探してみるのですが、意外と見つかりません。今度見つけたら、ぜひ食べたいと思っています。最近、久しぶりに村上春樹さんの「走ることについて語る時に僕の語ることを」を読み直しました。その中で、年を重ねていく中で、結局は自分自身のことを楽しむしかない、というような言葉がありました。何年か前に読んだときにはなんとも思わなかったのですが、いまはその言葉に救われています。自分のことを好きにはなれなくても、自分のことを楽しむことはできる。そうすることでどんな過去や現状も受け入れるような気がするのです。村上春樹さんの本は、読み直すたびに新しい発見があります。そして読み直すたびに、自分自身を楽しむことができている気がします。これからも村上春樹さんの執筆活動やラジオ、楽しみにしております。
ブルーベリー・マフィン、おいしいですよね。ブラック・コーヒーによく合います。間違いなく僕の小確幸です。口もとが真っ青になってしまうので、後始末が大変ですが。
おそれいります(22、女性、京都府)

いつも寝る前に聴いています。素敵な音楽をありがとうございます。質問なのですが、学生時代の恋愛で苦い経験があれば聞きたいです。
苦い経験いっぱいあります。やりなおしたいこともいっぱいあります。でももちろんやりなおせないので、同じような失敗を繰り返さないという方向でやっていくしかありませんよね。むずかしいですが。がんばりましょう。
アーモンドチョコレートが一番すき(68、女性、北海道)

途中半端という言葉にあまり違和感を持たないのは、子供の頃から周りの人たちが使っていたからだと思います。大正生まれの亡き父に「途中半端なことするな!!」と叱られたような気がします。ただ最近はあまり聞かないように思います。
そうか、だんだん廃れていってるんですね。かわいそうな「途中半端」。
アルコトのパパ(48、男性、北海道)

先日の放送で、「中途半端、途中半端問題」のことを村上さんが「ほんとかよ?」とおっしゃっておられました。それを聞いて、北海道在住の私は、「ほんとうだなぁ」と実感しました。言われるまで気づきませんでしたが(あまりに自分にとって「フツウ」なので)、確かに使い分けています。私の場合、「チュウトハンパ」はキツく尖った時に使います。「おい、お前、チュウトハンパすんなよ」みたいな感じです。上司が部下に、親が子どもに、「問い正す」もしくは「注意する」ような場合です。「途中半端」は落ち着いた声で、全く困ったもんだという感じに使います。「〇〇さん、仕事を途中半端なままで、行っちゃったんだね」。何かを「途中」のまま「半端」にしちゃったのは、きっと訳があったんだろうなという思いやりが入ります。村上さんが指摘してくれたおかげで、どんな使い分けをしていたのか自分で認識できました。あくまでこれは私の個人的な使い分けなので、一般的な北海道弁ではないと思いますが。
なるほど、そういう使い分けがあったんだ。言語の流動性というか、自律性に感心してしまいます。貴重な報告をありがとうございました。
遅れて来たレコードマニア(59、男性、滋賀県)

私は高校1年(1980年)からBilly Joelの大ファンです。村上ラジオでBilly Joelの曲がかかったのは、たぶん80’sリクエスト特集で、『Allentown』のイントロ部分だけだと思います。なので、AHMAD JAMALさんの『JUST THE WAY YOU ARE』がかかった時はとても嬉しかったです。大ファンと言っておきながこのカバーバージョンは初めて聞きました。まだまだ修行が足らないようです。翌週、名古屋で泊まりの出張だったので早速レコードを探しましたが、見つかりませんでした。中古レコード店で入手するのは困難そうですが、気長に探したいと思います。
アーマッド・ジャマルのあのレコードはなかなか見つからないと思います。貴重盤というわけではないんだけど、それほど数多く出回ったわけではないので。CD、出ているのかな?いずれにせよ、ジャマルさんはかなりマイナーな人なので。がんばって探してみてください。

スタッフ後記

スタッフ後記

  • サイン本プレゼントにたくさんのご応募をいただき、ありがとうございました。当選された方はサイン本が届くまで、いましばらくお待ちください。また、お寄せいただいたメッセージに、春樹さんから「お返事」が届きましたので、本サイトに掲載いたします。ゆっくりじっくり楽しんでください(構成ヒロコ)
  • 考えてみると、今回の企画は音楽家の二刀流、というのことでしょうか。上手くいく人もいるし、春樹さんのおっしゃるように、うーむと首を傾げる人も☺️いずれにせよ心から音楽を愛する、アーティストたちの真夏の夜の競演でした!(延江GP)
  • サイン本のプレゼントに沢山のご応募くださりありがとうございました。今回の特集は、普段は楽器を演奏しているプレイヤーが歌を歌っている曲が次々と登場しました。バディ・リッチとエラ・フィッツジェラルドの掛け合いが聞いていて楽しいですね。村上DJの秘蔵レコードをお楽しみください。(AD桜田)
  • 今回の「村上RADIO」は、プロフェッショナルなジャズ・ミュージシャンが、“歌ってみました”な曲を集めた特集でした。こうした「曲として聞く意味があるのか、ないのか」分からない音楽たちを丁寧に拾い集めて、しかも電波に乗せて流すところが「村上RADIO」の真骨頂だと思っています。音楽の価値が揺さぶられる55分間をお楽しみください。(キム兄)
  • 今月も、「村上RADIO」でしか聴けない秘蔵のレコードが次々登場します。4曲目、エラ・フィッツジェラルドとバディ・リッチがかけあいで歌う“Blue Skies”(ブルー・スカイズ)。ぷちぷちノイズが入るのも嬉しいですね。ディジー・ガレスピー”On the Sunny Side of the Street”のラスト部分、ソニー・ロリンズとソニー・スティットのテナー・サックスも最高です。今夏も猛暑がつづきます。夏の午後、木陰で音楽と読書を楽しみたい……ですが、暑過ぎるかな。(エディターS)

村上春樹(むらかみ・はるき)プロフィール

1949(昭和24)年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。’79年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『国境の南、太陽の西』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』、『1Q84』(毎日出版文化賞)、最新長編小説に『騎士団長殺し』がある。『神の子どもたちはみな踊る』、『東京奇譚集』、『パン屋再襲撃』などの短編小説集、『ポートレイト・イン・ジャズ』(絵・和田誠)など音楽に関わる著書、『村上ラヂオ』等のエッセイ集、紀行文、翻訳書など著訳書多数。多くの小説作品に魅力的な音楽が登場することでも知られる。海外での文学賞受賞も多く、2006(平成18)年フランツ・カフカ賞、フランク・オコナー国際短編賞、’09年エルサレム賞、’11年カタルーニャ国際賞、’16年アンデルセン文学賞を受賞。