2022年11月20日

絲山秋子
『沖で待つ』『勤労感謝の日』

(文春文庫)

今回取り上げた絲山秋子さんのもうひとつの小説「勤労感謝の日」。しかし題名とは裏腹に主人公の私は失業中。「何が勤労感謝だ」と怒りの言葉ではじまります。仕事を失ったきっかけは、父親のお通夜の席で会社の上司が母親に下品な言葉と態度をとったこと。気がつくと主人公の私は上司をビール瓶で殴り付けていました。お見合い相手にも腹が立ち、散々な日々が描かれていますが、しかし最後に寄った近所の飲み屋で救われる時間を持つことができるのです。「沖で待つ」も「勤労感謝の日」も読んでいくうちに、主人公を応援したくなる小説。そして一緒に居酒屋に行って飲みながら語り合ってみたい。どちらも主人公が身近な存在に感じる魅力的な作品です。

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