心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
1917年(大正6年)、志賀直哉が34歳の時に発表した小説「和解」。作家である主人公と父親との不和。そして和解するまでを描いた作品です。その不和の原因はあまりに多く、具体的な出来事は綴られていませんが、生後56日で亡くなった長女の死をめぐる主人公の複雑な想いを感じることができます。父親との気持ちのすれ違いから生じる苛立ち。父と息子、親子であるからこそ逃れられない苦悩。そして自分と父親の関係性を作品にしようと試みるも、その困難さを吐露する主人公。実は志賀直哉自身、父親との不和が続いていて、その事実をもとに書き上げた私小説だと言われています。
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