2022年10月2日 | |||
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菊人形見物で賑わう団子坂の風景からはじまり、最後も「秋の空」でしめくくる「置土産」。まるで落語でも聞いているような軽妙な語り口で、芸の世界の師匠と弟子の結びつきを描いています。作者である正岡容は、文筆活動は途切れず続けていくものの、酒や女性で失敗したり、貧困に苦しみながら住まいを転々とするような生活を送っていたとか。しかしそんな暮らしの中で、終生愛し続けたのが「寄席」でした。寄席研究家として弟子も持ち、その中には三代目・桂米朝師匠や小沢昭一さんもいたそうです。まるで「置土産」に出てくる如燕先生のような正岡容。風来坊で、でも憎めない。その人間的魅力も小説を読むと感じることができます。 |