2022年9月4日

宮澤賢治『風の又三郎』
(新潮文庫)

宮沢賢治が自ら手がけた初期の作品を「草稿」にして、書き上げていった「風の又三郎」。その「草稿」のタイトルは「風野又三郎」でした。岩手や新潟には「風の三郎様」という風童神の祭礼があるそうですが、宮沢賢治は「草稿」の中で又三郎を「風童」、風の精霊として描いています。しかし書き直していくうちに、風童でもあり、子供のようでもある不思議な存在の又三郎が出来上がっていきました。又三郎と一緒に過ごすうちに、現実のような夢のような世界を行き来する子供たち。しかし精霊の姿は子供の時にしか見ることができないのでしょうか?様々な体験をして成長した子供たちには、やがて又三郎の姿が見えなくなっていったのかもしれません。

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