2022年5月15日 | |||
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短篇小説「蘭を焼く」は1969年の作品です。その4年後の1973年、岩手県平泉にある中尊寺で得度。瀬戸内寂聴となり、翌年には京都に「寂庵」を開き、仏道を修めながら執筆活動を続けられていました。67歳の時、寂聴さんは、瀬戸内晴美時代の作品をこう綴られています。「自分の短篇については、今でも出家前のもののほうが好きだ。」そして「蘭を焼く」という短篇については「私が小説を書く上での一つの転機を迎えようと意図的に自分の作品に大手術した時の作品で、私にとっては忘れられない愛着のあるものである。」確かに今あらためて読んでも斬新な作品。モノクロ写真のように心の陰影を浮かび上がらせ、息詰まる男と女の心理劇が展開していきます。 |