2021年11月7日

金井美恵子『兎』
(『小川洋子の偏愛短篇箱』 河出文庫)

食用の兎を飼っている小百合の父親。月に2度、その兎で料理を作り、父と娘は物置小屋でふたりだけの晩餐を楽しみます。いつの間にか、他の家族は家から姿を消し、父と娘だけの生活がはじまり、そして驚くような結末が・・・。ファンタジーの姿を借りながら、人間がどこまで残酷になれるのか、リミッターをはずしたような小説。ルイス・キャロルが描いた「アリスの世界」に潜む真実をあばくような作品にも感じます。ちなみに小川洋子さんは18歳の時、金井美恵子さんの小説「愛の生活」と出会い「自分もこういうものを書いてみたい」と思ったそうです。10代の小川さんが見つけた小説の理想の世界。それが金井美恵子さんの作品の中にあるのでは?

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