心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
小川洋子さん自らお気に入りの短篇小説を選び編んだアンソロジー「小川洋子の偏愛短篇箱」。この中から今回は、金井美恵子さんの「兎」を取り上げました。1947年11月3日生まれ、20歳の時に小説「愛の生活」で作家としてデビューされた金井美恵子さん。短篇小説「兎」はその5年後の作品です。冒頭にルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」の文章が引用されているように、語り手の「私」が散歩をしていると、眼の前を大きな白い兎が走るのを見つけます。それは兎の扮装をした小百合という少女。「私」を家の中に招き入れた少女は、兎の巣のような部屋の中で、自分と家族に起きた出来事を話しはじめます。
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