心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
映画やテレビで長く愛されている「銭形平次」。原作は、野村胡堂の時代小説「銭形平次捕物控」です。文芸雑誌に第一作が掲載されたのが昭和6年のこと。今年は発表から90周年。383編ある物語の中から昭和13年の作品「巾着切の娘」を味わってみました。巾着切に380両という大金をすられてしまった徳之助。恋仲であるお富と身投げをしようとしたところ、かけつけた平次親分に助けられます。そのお富の父親というのが、実はかつて巾着切で、今は改心した左官職人。命がけで娘の将来を守ろうとするのです。そこで光る平次親分の人情裁き。読んでいても登場人物のセリフや動きがイキイキと伝わってくる傑作です。
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