2021年9月19日

吉田知子 『お供え』
(『小川洋子の偏愛短篇箱』 河出文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

泉鏡花の「春昼」、今村夏子さんの「あひる」、魚住陽子さんの「雨の中で最初に濡れる」など、読者を不安にさせる小説は様々ありますが、今回取り上げた吉田知子さんの「お供え」もそのひとつ。読んでいくうちに、どんどん不安な気持ちが大きくなっていきます。主人公である「私」の家の生垣の裾あたりに、毎日置かれる花たち。それはジュースの空缶にさしてあり、まるで「お供え」のよう。捨てても捨てても置かれるため、「私」は犯人を捕まえようとしますが、うまくいきません。実家で相談すると「おはらいしてもらったら」と母親に言われ、教えてもらった「ばあさま」に電話しても誰も出ないのです。

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