2021年7月25日

伊藤左千夫
『隣の嫁』
(ポプラ社・百年文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

伊藤左千夫というと、まず浮かぶのが小説「野菊の墓」。明治39年の作品ですが、100年以上も読み継がれ、映画やドラマにもなっています。今回取り上げた「隣の嫁」は、「野菊の墓」の2年後に発表された小説。明治時代の淡い恋心が描かれています。物語の主人公は農家に生まれた省作という19歳の少年。しかし農作業はまだ慣れていないため、1日稲刈りをしただけで腰が痛くなってしまいます。家族、親戚みんなで力を合わせて頑張る農家の仕事。すると働く合間に、こんな会話が飛び出します。隣の嫁のおとよさんが省作に惚れている・・・。そんなことを言われた省作も急に意識してしまうのです。

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