2021年6月6日

なだいなだ
『TN君の伝記』
(福音館文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

リスナーの方からリクエストをいただいた「TN君の伝記」。なだいなださんが、1976年に発表した作品で、主人公のTN君がいったい誰なのか、その名前が最後まで書かれていないという珍しい伝記文学です。「知ってもらいたいのは彼の名前ではなく、彼がどんなふうに生きたかということ。だから名前は邪魔になる」と作者のなださんは冒頭で綴られています。TN君が生まれたのは幕末の土佐。6歳になる頃、ペリーの艦隊が浦賀にやってきて、12歳の時に「安政の大獄」が起こります。世の中が大きく変わっていったこの時代を、TN君はどう生きていったのか。その人生をたどると様々なことが見えてきます。

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