2021年2月14日

トルーマン・カポーティ
『冷血』第二週
(新潮文庫)

カポーティは、この作品を完成させるため、実際に犯人のペリーやディックにも面会をおこない、手紙のやりとりも続けています。そんな中、カポーティが次第にひきつけられていったのがペリーでした。愛情のない家庭に育った彼を、自分と重ね合わせていたのかもしれません。しかし彼らが死刑宣告を受けることで、カポーティの葛藤も大きくなっていきます。死刑が執行されて小説を完成させたいと思う自分と、死刑囚を助けたいと思う自分との間で心が揺れ、精神的にも疲弊していきました。「冷血」以降、長編小説を一度も完成させることなく、晩年はアルコールと薬物中毒に苦しんだカポーティ。「叶えられた祈り」という長編小説も未完のまま1984年、59歳で急死しています。

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