2021年1月3日

宮城道雄
『新編・春の海-宮城道雄随筆集』

(岩波文庫)

今から127年前の明治27年、兵庫県神戸市に生まれた宮城道雄。生後200日の頃に目を患い、8歳で失明の宣告を受け、それをきっかけに箏曲の道を歩み始めます。しかしだからこそ、彼の中に響く音の豊かさを感じる随筆が数多く掲載されています。「音に生きる」という作品は、お正月に毎年同じ小鳥がやってくることに気づくというエピソード。「箏と私」では、箏と出会った幸せが綴られています。また親交の深かった内田百閧ニのつながりを書いた随筆も楽しいエピソードばかり。偏屈というイメージがある百關謳カを、あれほどまでになごませる宮城道雄の人間力は素晴らしいものがあります。実際に彼は人間味あふれる人物だったそうで、その魅力を感じることができる随筆集です。

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