2020年11月29日

三島由紀夫
『午後の曳航』
(新潮文庫)

登にとって海の男である塚崎竜二は、英雄のような存在でした。たくましい肉体と精神を持ち、登の知らない世界を教えてくれる英雄。だからこそ、竜二が自分の母親との結婚を考え、船を降りる決心をしたことが登にとっては赦しがたいものだったのです。もう一度彼を英雄にできる方法があるとするなら、それは彼を抹殺すること。そしてそれを実行する日がやってきます・・・。三島由紀夫が亡くなる7年前に発表した「午後の曳航」。この小説の中で描かれている「死」というものは、三島が抱えていたものと重なるのではないでしょうか?「午後の曳航」は、三島由紀夫の人生を紐解くうえで重要な意味を持つ作品とも言えます。

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