2020年11月29日

三島由紀夫
『午後の曳航』
(新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

1970年11月25日、45歳で亡くなった三島由紀夫。今年は没後50年、代表作の中から「午後の曳航」を選んでみました。亡くなる7年前に発表された小説。イギリスで映画化され、ドイツではオペラにもなり、海外でも評価された作品です。横浜の山手で暮らす33歳の未亡人、房子と13歳の息子、登。二人の暮らしに入ってくる船乗りの塚崎竜二。房子は、船の中を案内してくれたお礼に塚崎を食事に誘い、やがて深い関係になっていきます。まるでメロドラマのような設定ですが、しかしそこは三島由紀夫。ありふれた物語の向こうに、残酷な結末が待っているのです。

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