2020年10月04日

エドガー・アラン・ポー
『アッシャー家の崩壊』
(新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

アメリカの作家エドガー・アラン・ポー。1849年10月7日、40歳で亡くなっています。命日を前に取り上げたのは小説「アッシャー家の崩壊」。30歳の時に発表した代表作です。ゴシック小説の名作とも呼ばれていますが、ゴシックとはもともと中世の寺院や城などに見られる建築様式。18世紀から19世紀にかけてはそのゴシックをイメージした神秘的で幻想的な小説が流行しました。「アッシャー家の崩壊」を読み始めると、まさに歴史的建造物の装飾のような修飾語の数々。しかしその飾られた言葉に明るさはありません。「気怠く」「重苦しく」「虚ろなる」などなど。読み進めていくうちに読者は、ポーが描く重苦しく虚ろな世界に入っていきます。

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