心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
明治38年、広島県に生まれた原民喜。大正13年、慶應義塾大学に入学後、東京や千葉で暮らすようになりますが、戦争の状況がひどくなった昭和20年1月、ふるさとの広島に疎開。8月6日に投下された原子爆弾の体験をもとに小説を書き、「夏の花」という題名で、昭和22年「三田文学」に発表しました。爆心地から1.2キロ。原爆が投下された時、「厠」にいたため一命はとりとめた原民喜。状況が把握できないまま外に出て、その後の状況を綴っていきます。その描写は感情でごまかさず、ありのままを淡々と記したもの。実際に原爆を体験した人だからこそ残せたこの貴重な作品は、戦後75年たった今も、原爆の恐ろしさ、戦争の悲惨さを伝えてくれます。
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