心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
中勘助と言えば、番組でも2008年に取り上げたことがある「銀の匙」が浮かびます。自分の少年時代を綴った自伝的小説。中勘助が20代の頃の作品で、大正2年から3年にかけて朝日新聞に連載されていました。今回の「鳥の物語」は、昭和7年から38年まで戦前戦後をとおして執筆された12の物語。「鳩」「鶴」「ひばり」など様々な鳥たちが王様の前で語りだすという短編集です。最初に掲載されているのが「雁の話」。その羽は、鶴や鵠などに比べると見劣りはするけれど、雁は雁で自分の種族に誇りを持って語り始めます。それは中国がまだ漢だった時代のこと。雁の群れは季節にあわせて北海と長安の間を行き来していました。
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