心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
林芙美子が書きためていた日記ふうの雑記帳をもとにまとめた自伝的小説「放浪記」。昭和3年に雑誌に連載され好評だったことから昭和5年7月、林芙美子が26歳の時に刊行されました。先週は、この「放浪記第一部」を味わっていきましたが、この作品は当時ベストセラーとなり、4ヶ月後には「続放浪記」(新潮文庫では「放浪記第二部」として掲載)、さらに戦後には「放浪記第三部」も発表されています。「第二部」の最初に記されているのは、主人公が島に戻ってしまったかつての恋人に会う場面。実際に林芙美子は、広島県尾道市の高等女学校時代、因島出身で東京の明治大学に通う岡野軍一という若者と親しくしていました。
...続きを読む |