2020年01月26日

マグダ・オランデール=ラフォン
『四つの小さなパン切れ』
(みすず書房)

「四つの小さなパン切れ」という題名が付けられているように、この本の中にはパンにまつわる様々な記憶が記されています。瀕死の女性からパン切れを渡され、それを口にした著者。生と死の境界線が曖昧な状況の中では、たったひと切れのパンが生きることにつながっていくのです。メロディアス・ライブラリーでは、今までにも心理学者ヴィクトール・E・フランクルの「夜と霧」や、化学者プリーモ・レーヴィの「アウシュヴィッツは終わらない これが人間か」を取り上げました。このふたつは専門家が記した本ですが、今回の「四つの小さなパン切れ」は、平凡な女性が自分の心の中をありのままに吐露したもの。だからこそ記された言葉ひとつひとつが、読者の心の中に静かに入ってくるのです。

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