2019年11月03日

池波正太郎
『錯乱』
(宝島社文庫『時代小説傑作選』)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

宝島社文庫の「この時代小説がすごい!時代小説傑作選」には、書評家、ライター、編集者、書店員の方たちのアンケート投票による短編時代小説のオールタイムランキング、そのベスト5が収められています。今回取り上げたのは第3位に選ばれている池波正太郎の「錯乱」。1960年の直木賞受賞作です。時代は江戸時代の初期「元和」。登場するのは信濃国にあった松代藩の初代藩主、真田信幸。現在は93歳となり、家督を息子の信政にゆずり、城外で隠居生活を送っています。ところがその息子の真田信政が突然倒れ、亡くなったことにより松代藩真田家の相続問題が起こります。信政は自分の息子に継がせたいと遺言を残しますが、その愛児はまだ2歳でした。

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