心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
「母の日」にちなんで選んだのは、谷崎潤一郎の「母を恋うる記」。大正8年、32歳の時に発表した短編小説です。谷崎と言えば今までに小説「細雪」「春琴抄」「猫と庄造と二人のおんな」を取り上げましたが、どれを読んでも感じるのは、彼の屈折した女性観。その根底にあるのは何なのか?今回は「母を恋うる記」をとおして、谷崎の心の奥底にある母親への想いを感じてみました。内容は、語り手である「私」が白く続く街道を、たった一人で歩いていくというもの。「私」はまだ7つか8つの子供。五感を使った描写で、夢を見ているような不確かな世界を表現していく谷崎。あらためて文豪の凄さを感じてしまいます。
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