2018年9月2日

泉鏡花
『天守物語』
(岩波文庫)

天守夫人「富姫様」と、姉妹のように親しい岩代国猪苗代の「亀姫様」とのやりとり。「亀姫様」が持ってきた驚愕のお土産。秋の七草の名前が付いた5人の侍女たちの会話。そして「富姫様」と「図書之助」の恋。この世ではありえない世界なのに、読むとその舞台が手に取るように見えてくる不思議な戯曲。泉鏡花はこの作品を上演することを強く望んでいましたが、生前その夢は叶いませんでした。9月7日は泉鏡花の命日。今から79年前に亡くなっていますが、現在「天守物語」は様々な形の舞台で上演されています。もしお城の天守のどこかで、泉鏡花が人間の世界を見下ろしていたら、きっと坂東玉三郎さんが演じる「富姫様」の姿を喜んでいるのではないでしょうか?

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