心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
泉鏡花というと、10年前に取り上げた「高野聖」を思い出します。高野山の僧侶が山越えをした際、妖艶な美女にもてなされますが、実は男を動物に変えてしまう妖怪だったという物語。泉鏡花が27歳の時に発表した小説でした。それから16年たった大正6年、43歳の時の戯曲が「天守物語」。「高野聖」と同じく幻想的な世界が描き出されています。時は不詳(ただし封建時代)、所は播州姫路、白鷺城の天守(第5重)。天守に住む「富姫様」と、そこに偶然迷い込んでしまった人間「姫川図書之助」。あの世とこの世をこえて巡り合った二人の「千年の恋」はどうなっていくのか?戯曲を読むだけで、その不思議な世界を体感することができます。
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