心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
若い作家の方たちが、自分なりの形で東日本大震災のことを記そうとしています。去年取り上げた木村祐一さんの「イサの氾濫」。そして今年は沼田真佑さんの小説「影裏」を味わってみました。昨年、文學界新人賞と芥川賞を受賞した作品。岩手を舞台に、7年前に起きた東日本大震災への沼田さんの想いも感じる小説です。書き出しは渓流釣りの場面。物語の主人公は、同じ会社に勤める日浅という男と一緒に出かけています。キラキラする岩手の自然と対照的に、何かを抱えているような登場人物の二人。その後、日浅が突然、会社を辞めたことがきっかけで、少しずつ主人公の心の影が見えてくるように感じます。
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