2017年6月25日
山下澄人
『しんせかい』
 (新潮社)

芥川賞の選考委員である小川洋子さんは小説「しんせかい」を興味深く読んだそうです。その理由は「作家の本能に逆らうようにして書かれたユニークな作品」だったから。では作家の本能とはどういうものなのか?読者を意識して書き、言葉にできないものを言葉にしようとするのが作家の本能。しかし山下澄人さんは、何もわからない主人公をそのまま書いています。そして時間も場所も離れている様々な場面を切れ目なくひと続きに描いていきます。これは主人公の意識の流れを忠実に綴ったもの。確かに人の意識は脈絡なく時間も場所も飛んでいきます。それをありのままに描いているのが小説「しんせかい」。黒い墨で「しんせかい」と書かれた本を書店で見つけたら、ぜひ手にとってみて下さい。

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