2017年6月25日

山下澄人
『しんせかい』
 (新潮社)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

書店にいくと、ひらがなで大きく「しんせかい」と書かれた本が目をひきます。これは第156回(平成28年度下半期)芥川賞受賞作。作者の山下澄人さんは、倉本聰さん主宰の「富良野塾」にかつて所属されていて、装丁の題字はその先生である倉本聰さんによるものです。小説の内容も「富良野塾」の体験をもとに書かれました。主人公の青年「やましたすみと」は、たまたま間違って配達された新聞から演劇塾の募集記事を見つけ応募します。そして北を目指す船に乗り込み、俳優や脚本家になるという同じ夢を持つ人たちと旅立っていきます。彼らを待っていたのは自給自足の共同生活。自分たちが住む場所まで作らなければならないという暮らしでした。

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