2017年5月14日
田山花袋
『田舎教師』
 (新潮文庫)

「田舎教師」の主人公である林清三にはモデルがいました。田山花袋の親友で義理の兄でもある太田玉茗という人物が埼玉県羽生にあるお寺の住職になり、そこにひとりの若者が下宿していました。田山花袋がある日、そのお寺を訪ねた時、新しい墓を見つけ、その若者のものであることを知ります。そして残された日記やメモは、彼の唯一の文学作品であると感じ、その志に流れる哀愁に胸を打たれ小説「田舎教師」を書きました。文学や音楽への熱い情熱を持ちながら、病による早い死のためにその夢を閉ざされてしまった若者。しかし「田舎教師」という作品がこの世に出たことで、彼の志は時代を越えて生き続けていくように思います。

...前に戻る