2017年3月5日
ジュリー・オオツカ
『屋根裏の仏さま』
 (新潮クレストブックス)

日系一世の父親と日系二世の母親のもと、カリフォルニア州で生まれたジュリー・オオツカ。彼女の一族の中に「写真花嫁」はいなかったそうですが、会ったこともない男性と結婚するために海を渡った娘たちに興味を覚え、調べるようになっていきます。そして膨大な資料をもとにいざ書きはじめると、心に残るエピソードがあまりに多すぎて、書きたいことのごく一部も盛り込めないことに気づきました。そこで思いついたのが「わたしたち」という一人称複数の語り。この小説には特定の主人公はなく、「写真花嫁」だった女性たちひとりひとりの想いが綴られています。その想いは囁きのように聞こえ、その声はやがてひとつになって合唱のように読者の心に響いてくるのです。

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