2016年6月12日
牧野富太郎『なぜ花は匂うか』
 (平凡社 STANDARD BOOKS)

「飯よりも女よりも植物が好き」という牧野富太郎。しかし実際には女性の大きな支えがあってこそ、植物の研究に集中することができたのです。明治21年、壽衛という女性と結婚。東京の根岸に所帯を持ちました。食べるものにも困る生活の中、妻は13人の子供を産み育て、古いつぎだらけの着物を着て家族を守りました。「地位も名誉もいらぬ。ただ学問がしたいのだ」という牧野富太郎のことを、妻は「まるで道楽息子をひとり抱えているようだ」と言いながら支え続け、昭和3年、50代で亡くなっています。そして同じ頃、牧野富太郎は仙台で新種の笹を採集。妻の名前から「スエコザザ」と名付けているのです。

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