2016年5月1日

吉屋信子
『花物語(上)』
 (河出文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

大正から昭和にかけて活躍した女性作家・吉屋信子の代表作「花物語」。1篇ごとに花のタイトルが付いた連作短編集です。その最初の物語「鈴蘭」が雑誌「少女画報」に発表されたのが大正5年。今からちょうど100年前のことでした。美しい7人の少女が集まり、そのひとりが神秘的な出来事を語るという短いお話。これがとても評判がよかったため、その後も「月見草」「白萩」「山茶花」など花をタイトルにした作品が発表され、女学生のバイブルとも言われるほど人気となりました。田辺聖子さんも若い頃「花物語」に夢中になったおひとり。吉屋信子のファンだった田辺さんはその後「ゆめはるか吉屋信子」という評伝も発表されています。

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