心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
「雪国」と並んで、川端康成の代表作のひとつ「伊豆の踊子」。大正15年、川端康成が26歳の時に発表した初期の作品です。孤独な気持ちを抱えた二十歳の青年が、憂鬱な気分から逃れるために一人で伊豆を旅します。そこで出会ったのが旅芸人の一行。湯ヶ島から天城峠を越えて下田に向かう途中、何度も旅芸人に出会ううちに、青年はまだ幼さが残る少女のような踊子にひかれていくのです。川端康成ならではの美しい言葉で綴られていますが、読んでいくと若さが持つ「いびつさ」を感じる作品。主人公の抱えた気持ちや踊子への想いはどこか一方通行で、私が勝手に想い勝手に別れていくという若さならではの内面が描かれています。
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