2015年11月01日
フィリパ・ピアス
『まぼろしの小さい犬』
 (岩波書店)

おじいさんから犬の絵をプレゼントされたベン。犬を飼いたいと強く望んでいたため、やがて心の中で「まぼろしの犬」を飼い始め、最終的に本物の犬を手にすることが出来るのです。しかしこれでハッピーエンドではないのが、この物語の文学性の高さ。現実の犬を手に入れることで想像の犬と別れなくてはならないベン。さらに手にした現実の犬は、自分の理想ではありませんでした。そこからさらなるベンの成長が描かれています。フィリパ・ピアスの「トムは真夜中の庭で」がファンタジーの傑作なら、「まぼろしの小さい犬」はリアリズムの傑作。子供だけでなく大人が読んでも深く伝わってくる児童文学です。

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