心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
今年は戦後70年。「終戦の日」を前に手にしたのは古山高麗雄の「蟻の自由」です。太平洋戦争で南方に送られた兵士が妹に手紙を書くという形で綴られた短編小説で、1971年に発表されています。手紙を書くと言っても闇の中でやみくもに鉛筆を動かしているだけ。その手紙は相手には届かず書き終えたあと土に埋めてしまうのです。そこには本当の戦争の姿が描かれています。これほどまでにリアルに書けるのは、古山高麗雄さん自身、兵士として南方に行かれていたからではないでしょうか?昭和17年、22歳の時に招集を受け、カンボジアなど南方各地を転戦され、ラオスの収容所で終戦を迎えられたそうです。
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