2014年09月21日
『堤中納言物語』
 (角川ソフィア文庫 ビギナーズクラシックス)

「虫めづる姫君」の他にも、興味深い物語が入っている「堤中納言物語」。姫君と間違えて祖母を盗み出してしまう「花桜折る中将」。二組のカップルが相手を取り違え、それぞれ結ばれてしまう「思はぬ方にとまりする少将」など。小川洋子さんの心に残ったのは「はい墨」という作品。優柔不断で女好きの男が主人公の物語です。「堤中納言物語」に収められている10編は「どれも人間が生き生きと描かれている」と小川洋子さん。平安時代にこれほど素晴らしい短篇集があったとは驚きます。人間の奇妙さ、優しさ、切なさ、高慢さなど人間の持っているものは今も昔も変わらない。古典文学を味わうといつも必ずそう感じてしまいます。

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