心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。
平安時代の短編集として唯一残っている「堤中納言物語」。時代も作者も異なっている短い物語が10編収められている古典文学です。しかしいくら読んでも堤中納言という人物は出て来ません。なぜこのような題名になったのか謎ではありますが、どれも素晴らしい短編が、春から夏、秋から冬へと季節にあわせて編集されています。中でも一番印象に残るのは「虫めづる姫君」という物語。生命誌研究者の中村桂子さんがこの物語について「平安時代にも生物学者がいた」とおっしゃっていて、毛虫をかわいがるという興味深い姫君が主人公。もちろんただ可愛がるのではなく、論理的に生き物の本質を見抜く力も持っています。
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