2013年11月24日
丸谷才一
『樹影譚』
 (文春文庫)

丸谷才一さんは生前「樹影譚」についてこう語られています。「要するにぼくが夢のなかで見たのかもしれないストーリーとは別のストーリーを創るという話です。ある人間がここに存在しているのは、誰かがそういうストーリーを創ったからで、いったいそれは誰なのか、という話です」。つまり「樹影譚」は小説とは何なのかを考える小説。物語は誰のものなのかを問いかける小説なのかもしれません。様々な視点と知識と経験があるからこそ書ける「樹影譚」という小説。読んでいくとバラバラだった樹のイメージが重なりあい、やがて怖ろしいようなラストシーンへとつながっていく。今までに読んだことのない小説の世界を体験できるのです。

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