2013年07月28日
中村紘子
『チャイコフスキー・コンクール』
(新潮文庫)

中村紘子さんというと、思い出すのが庄司薫さんの小説「赤頭巾ちゃん気をつけて」。1969年に発表されたこの作品の中に、中村紘子さんの名前が登場して、その5年後にお二人はご結婚されています。世界的ピアニストであると同時に、文筆家としても素晴らしい才能を持っている中村紘子さん。このエッセイの第四章「採点メモ」では、コンクールの参加者の演奏を聴きながら取ったメモが紹介されています。その表現が見事。「狂気ともいえるような異様なフォルティシモの連続」「清涼さと構成感をもって弾き分ける」など様々な言葉で音楽を表現されています。まさに音楽と文学の融合。本を読みながらピアノの音が心に響いてくる1冊でもあります。

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