2013年05月19日

深沢七郎
『楢山節考』
 (新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

1956年に「中央公論新人賞」を受賞した深沢七郎の小説「楢山節考」。1958年と1983年の2度映画化され、今村昌平監督が手掛けた1983年の作品はカンヌ国際映画祭で最高の「パルムドール」も受賞しています。このことから世界的にも知られるようになった「楢山節考」。物語の舞台は信州の山あいの村。貧しいこの村では年寄りは70になったら楢山まいりに行くのが習わしです。しかしそれは一度行ったら二度と戻らないというもの。村に暮らすおりんも今69歳。その時が近づいています。息子である辰平はどうするのか。「姥捨山伝説」を題材に淡々とした文章で語られる小説。生々しい感情がないからこそ、より強く伝わってくるものがあるのです。

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