2013年03月17日
福永武彦
『草の花』
 (新潮文庫)

作者・福永武彦自身、昭和20年、27歳の時に急性肋膜炎を患い、その後、肺結核の診断を受け、帯広の療養所に入ります。その時にはおよそ2ヶ月で退所。しかし翌年、再発。昭和22年には6月に帯広、11月には東京郊外の清瀬の療養所に入り、5年以上過ごしています。福永武彦の息子さん・池澤夏樹さんが「福永武彦新生日記」という本の中でこんな言葉を書かれています。「作品は作品、人生は人生と言っていわゆる私小説を否定したこの作家は、しかし魂の次元では自分に近い主人公を何度となく描いた」。そのひとつが「草の花」の汐見茂思かもしれません。小説というのは、作家の魂から生まれてくるもの。あらためて感じる1冊です。

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