2013年03月17日

福永武彦
『草の花』
 (新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今週は、沢山のリクエストをいただいている作品「草の花」。福永武彦が昭和29年に発表した小説です。彼は大正7年3月19日生まれ、36歳の時の作品です。最初の章「冬」では、物語の語り手「私」が結核を患い東京郊外のサナトリウムで過ごすエピソードが綴られています。そこで汐見茂思という人物に出会いますが、彼は手術中に亡くなってしまい、残されたのは2冊のノオト。2章3章ではそのノオトの内容が紹介されています。そこには汐見が想いを寄せた二人の人物が描かれていて、一人は高校の弓道部で共に過ごす藤木という男。もう一人は、藤木の妹・千枝子です。しかし二人は汐見の想いをどう受け止めていいのかわからない。読めば読むほど何かを抱えている小説だと感じます。

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