2012年11月25日
武田百合子
『犬が星見た−ロシア旅行』
 (中公文庫)

武田百合子さんの「犬が星見た−ロシア旅行」は、小川洋子さんが好きな紀行文学のベストワンであり、さらにベストワンのあとがきを持つ本でもあるそうです。その中には1匹の犬が登場します。頭をかしげ、ふしぎそうに星空を見上げて動かないその犬は、死者たちの乗った宇宙船と交信しているのかもしれません。そしてその宇宙船には、ロシア旅行が最後の旅となった最愛の夫、そして一緒に旅した竹内さんも乗っているように、百合子さんには思えるのです。このあとがきは、武田泰淳さんが亡くなられて3年後に書かれたもの。「犬が星見た−ロシア旅行」は、あとがきまでしっかり味わいたい、とっておきの1冊です。

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