2012年11月25日

武田百合子
『犬が星見た−ロシア旅行』
 (中公文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

今週取り上げたのは、小川洋子さんのお気に入りの紀行文学「犬が星見た−ロシア旅行」。武田百合子さんが、ご主人の武田泰淳さん、泰淳さんの終生の友で中国文学者の竹内好さんとともにロシアを旅した思い出が綴られています。その出発は、昭和44年6月。横浜大桟橋から「ハバロフスク号」という船に乗って出かけます。実はこの時、夫・武田泰淳さんは生涯最後の旅を予感していたとか。「つれて行ってやるんだからな。日記をつけるのだぞ」と泰淳さんに言われ、百合子さんは旅の日々を書き続けます。それは、百合子さんの心が自由に感じた風景や旅の出来事。40年以上たって読んでもイキイキと伝わってきます。

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