2012年10月28日

戸川幸夫
『高安犬物語』
 (国土社)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

日本初の本格的な動物小説と呼ばれる「高安犬物語」。作者の戸川幸夫さんは日本のシートンのような存在。1912年(明治45年)佐賀県で生まれ、旧制山形高校(現在の山形大学)を卒業後、新聞記者として活躍します。その後、創作活動に入り、昭和29年に発表したのが「高安犬物語」です。高安犬とは、山形県高安地方で飼われていた日本犬。犬張子のような体型で優秀なマタギ犬と言われていました。戸川さんは「高安犬」の姿を追い、そこで出会ったのが猟師「吉蔵」が飼っていた「チン」。それは高安犬として最後の1頭でした。「チン」と吉蔵、さらに「高安犬」を保存したいと思う人達とのつながりを描いたのが「高安犬物語」です。

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