2012年08月19日
上田秋成
『雨月物語』
 (小学館)

「吉備津の釜」の他にも、「菊花の約」「浅茅が宿」「青頭巾」などのお話が収められている「雨月物語」。どれも肉体と魂が分離する物語です。幽霊も鬼も人間の心の闇が生み出したもの。「雨月物語」を読むと、生きている人間が一番怖いと感じます。その怖さを知っているのは江戸時代も現代の私たちも同じ。だから240年近くたっても、「雨月物語」に描かれた世界に共感することができるのです。それにしても江戸時代の文学はなんと豊かだったのでしょう。井原西鶴の「世間胸算用」、十返舎一九の「東海道中膝栗毛」、滝沢馬琴の「南総里見八犬伝」。まさに文学遺産と呼べる江戸時代の文学をこれからも味わっていきたいと思います。

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