2012年08月12日
阿川弘之
『雲の墓標』
 (新潮文庫)

作者の阿川弘之さんも、戦争中は海軍予備学生として海軍に入っていたそうです。その体験を踏まえて、昭和31年に発表した「雲の墓標」。戦争が終わって67年たった今でも、読み継がれている小説です。「大きな歴史を、歴史の上から理解するのには無理がある。戦争で人が死ぬことの意味を、ひとりの人間から感じるためには、やはり小説が必要」と小川洋子さん。そして小説という形になっているからこそ、戦争の悲惨さを未来にまで伝えていくことができるのです。「雲の墓標」を読んでいくと、主人公の吉野次郎が自分とは無関係ではないことを感じます。その感覚を伝えることができるのも文学があるからです。

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