2012年08月12日

阿川弘之
『雲の墓標』
 (新潮文庫)

心の本棚にある、たくさんの名作の中から、今週はこちらをご紹介します。

「終戦の日」を前に選んだ1冊、阿川弘之さんの「雲の墓標」。太平洋戦争の時代、特攻隊員となった若者たちを描いた小説です。主人公は、京都大学の学生で万葉集を学んでいた吉野次郎。彼は、昭和18年12月、特攻学徒兵として広島県の大竹海兵団に入団します。そこからつけ始めた彼の日記を通して、戦争中の若者たちの不安や苦悩を描いています。仲間や家族のこと。飛行機の操縦訓練、淡い恋。学問への未練や生きる喜び、そして死への不安。ひとりの青年が綴る日記形式になっているからこそ、当時の若者たちの想いがリアルに伝わってくるのです。

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